「夢をまことに」山本兼一著

公開日: 更新日:

 主人公は、近江の国友村で鉄砲鍛冶を営む国友一貫斎(くにともいっかんさい)。足利将軍の頃から鉄砲鍛冶の家系だったが、徳川の世になって仕事が減り、一貫斎はもちろん村人たちの暮らしも厳しくなっていた。

 その上、役人が自由に鍛冶の仕事を請け負うことを問題にして江戸の鉄砲玉薬奉行に訴えたため、江戸に出向くことに。やましいことのない一貫斎は、この江戸行きをこれからの村を支える技術を学ぶ機会だと考え、空気で玉を飛ばすオランダの風炮を参考に新たに日本製の「気炮」を完成させる。国友村に新たな仕事をもたらした一貫斎は、さらに遠くまで見ることができるテレスコップ、海の中を進む潜水艦、鳥のように飛ぶ飛行機などモノづくりへの果てなき夢に挑戦していく。

「利休にたずねよ」で直木賞を受賞し、昨年2月に逝去した著者が残したモノづくりに魅せられた男の一代奮闘記。さまざまな難題に一つ一つ向き合う主人公の真摯な姿がすがすがしい。(文藝春秋 2200円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  2. 2

    阿部巨人V逸の責任を取るのは二岡ヘッドだけか…杉内投手チーフコーチの手腕にも疑問の声

  3. 3

    阪神「次の二軍監督」候補に挙がる2人の大物OB…人選の大前提は“藤川野球”にマッチすること

  4. 4

    阪神・大山を“逆シリーズ男”にしたソフトバンクの秘策…開幕前から丸裸、ようやく初安打・初打点

  5. 5

    巨人桑田二軍監督の“排除”に「原前監督が動いた説」浮上…事実上のクビは必然だった

  1. 6

    創価学会OB長井秀和氏が明かす芸能人チーム「芸術部」の正体…政界、芸能界で蠢く売れっ子たち

  2. 7

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  3. 8

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  4. 9

    大死闘のワールドシリーズにかすむ日本シリーズ「見る気しない」の声続出…日米頂上決戦めぐる彼我の差

  5. 10

    ソフトB柳田悠岐が明かす阪神・佐藤輝明の“最大の武器”…「自分より全然上ですよ」