300人分の「扮装」が生み出すフシギ

公開日: 更新日:

 天・地を除く「本全体」を覆い隠すようにグルリと巻き付けられた黒い厚紙は、変則カバーといったところ。正面左側半分、縦方向に巻き付いている「帯」もまた黒一色。

 極めつきは本文。「全ページ黒バック」は先述の通り。インキは盛りに盛ってある。加えて、天・地・小口3方向の断面も黒く着色。冒頭のバリバリ音の正体はこれ。染料で黒く塗られた部分が剥離する音だ。紙地の白は、撮影スタジオ内の「写り込み(邪魔な光)」同様、徹底的に排除されている。カバー、帯を外したむき出しの本書は、どの方向から見ても「黒い部屋」そのものだ。

 最後に。本書の「開きやすさ」は特筆に値する。今日普及しつつある技術、「PUR製本」については指摘するだけにとどめ、またの機会の宿題としよう。(青幻舎 5000円+税)

◇みやぎ・あずさ 工作舎アートディレクター。1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。


【連載】見た目で買った面白読本

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人・戸郷翔征は「新妻」が不振の原因だった? FA加入の甲斐拓也と“別れて”から2連勝

  2. 2

    萩生田光一氏「石破おろし」がトーンダウン…自民裏金事件めぐり、特捜部が政策秘書を略式起訴へ

  3. 3

    参政党は言行一致の政党だった!「多夫多妻」の提唱通り、党内は不倫やら略奪婚が花盛り

  4. 4

    【夏の甲子園】初戦で「勝つ高校」「負ける高校」完全予想…今夏は好カード目白押しの大混戦

  5. 5

    早場米シーズン到来、例年にない高値…では今年のコメ相場はどうなる?

  1. 6

    落合博満さんと初キャンプでまさかの相部屋、すこぶる憂鬱だった1カ月間の一部始終

  2. 7

    打者にとって藤浪晋太郎ほど嫌な投手はいない。本人はもちろん、ベンチがそう割り切れるか

  3. 8

    伊東市長「続投表明」で大炎上!そして学歴詐称疑惑は「カイロ大卒」の小池都知事にも“飛び火”

  4. 9

    “芸能界のドン”逝去で変わりゆく業界勢力図…取り巻きや御用マスコミが消えた後に現れるモノ

  5. 10

    自民両院議員懇談会で「石破おろし」が不発だったこれだけの理由…目立った空席、“主導側”は発言せず欠席者も