著者のコラム一覧
宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

冒険心満載の“オトナ”の雑誌

公開日: 更新日:

「疾駆 第4号 KUMANO」

 ハードカバー・角背・クロス装の「大人の雑誌」をご紹介する。

 年4回発行。手元の第4号の特集は「熊野」。これまでも「根室」「博多」「陸前高田」と、地域を切り口に「読者目線」の特集が組まれ、その号ごとに本文用紙が変更された。使われるのは、いわば「ご当地用紙」である。今回は熊野にちなみ、北越紀州製紙「紀州の色上質」。全33色のバリエーションから、「あさぎ・水・若草・もえぎ」の各色が選ばれている。小口に浮かび上がる、早春らしい青~緑のグラデーションがすがすがしい。

 造本上、特筆すべきは、「チリ(ハードカバー特有の、本文からはみ出た部分。通常3ミリ)」。寸法がバラバラなのだ。特に天方向は10ミリほどもあり強烈な個性となっている。本来、チリの機能は本文の保護。だが本書は常識の域を越えている。ともあれ、製本所の技術と努力に拍手。ちなみに「チリ」の語源は不明。仏語ではchasse(追い出し)。天・地・小口の3方向に追い出す(伸ばす)=散らす、が転じ「散り」となったか?

 さて、使用書体はイワタ明朝体オールド、一書体限定。ゴシック体が見当たらない。しかも横組み。DTP黎明期の文字組みを思わせる。天・地・小口までのアキがギリギリ、清潔かつ緊張感漂う紙面が美しい。巻頭の特集以外は、アート領域をテーマにしたコラムが続く。記事の随所に配されたカラー写真が効いている。第一印象は写真集のよう。ただ、全ページが「色付き」、しかも色上質紙の特性上、写真本来の質感や色味は、犠牲にならざるをえない。「ご当地用紙」という縛りがあるとはいえ、不思議なチョイス。ワザワザなぜだろう?

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