【70年目の終戦記念日】永遠平和は空虚な理念ではなく、課された使命

公開日: 更新日:

「君死に給ふことなかれ」古川薫著

 昭和20年7月末、沖縄戦も終わった後の慶良間諸島沖合で、米駆逐艦キャラハンが特攻機によって沈められた。驚いたことに攻撃したのは布張り複葉の九三式中間練習機、通称「赤トンボ」だったのだ。本書はこの作戦に縁のあった当年90歳の直木賞作家による実録小説。

 戦時中、軍事動員で赤トンボの増産に駆り出された深田隆平少年。作家自身の分身とおぼしい彼が機体に武運長久を祈る言葉を書きつけたところ、この機体で特攻におもむくという航空兵M・Kからの手紙を受け取る。それから数十年。よわいを経て作家となった隆平はM・Kの消息を求めて台湾、沖縄諸島へとおもむき、川平誠少尉の存在へと行き当たる。絶望的な戦況の中で策定された無謀な特攻作戦。若者たちはだまって運命に従い、散華していった。茫漠たる悪夢のような戦争の記憶。まことに彼らは死ぬ必要などなかったのだと説く痛憤の小説。(幻冬舎 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    【広陵OB】今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  2. 2

    横浜高では「100試合に1回」のプレーまで練習させてきた。たとえば…

  3. 3

    健大高崎158キロ右腕・石垣元気にスカウトはヤキモキ「無理して故障が一番怖い」

  4. 4

    中居正広氏「秘匿情報流出」への疑念と“ヤリモク飲み会”のおごり…通知書を巡りAさんと衝突か

  5. 5

    広陵・中井監督が語っていた「部員は全員家族」…今となっては“ブーメラン”な指導方針と哲学の数々

  1. 6

    前代未聞! 広陵途中辞退の根底に「甲子園至上主義」…それを助長するNHK、朝日、毎日の罪

  2. 7

    渡邊渚“初グラビア写真集”で「ひしゃげたバスト」大胆披露…評論家も思わず凝視

  3. 8

    中居正広氏は法廷バトルか、泣き寝入りか…「どちらも地獄」の“袋小路生活”と今後

  4. 9

    あいみょんもタトゥー発覚で炎上中、元欅坂46の長濱ねるも…日本人が受け入れられない理由

  5. 10

    あいみょん「タモリ倶楽部」“ラブホ特集”に登場の衝撃 飾らない本音に男性メロメロ!