【戦後70年を問う】「戦争の記憶」は世代によって変わる。いま問われるのは戦後70年を語る多種多様な「目」と「声」の記憶だ。

公開日: 更新日:

「戦後70年 わたしの戦争体験」小説現代編

 戦後も70年経つと「戦争体験者」といっても兵隊としてではなく、少国民すなわち子どもの身で戦争の日々を生きたという世代が主流になる。雑誌「小説現代」が戦後70年の特別企画として連載したものをまとめた本書は、まさにこの少国民世代が語る戦争の記憶集だ。

 たとえば近年ますます仙人の風貌になった昭和12年生まれの山藤章二氏が語るのは、戦艦大和の建造や日本の国際連盟脱退のニュースが「誇らしい手柄」として喧伝された幼時の思い出。猫の額ほどの庭に防空壕を掘る作業ですら楽しいのが子ども。しかしそれは子どもらの日常すら戦争に巻き込んでいくファッショの力だったのだ。

 他方、昭和8年生まれで少し年長の森村誠一氏は愛読誌「少年倶楽部」が日中戦争開始直後から急に薄く貧弱になったことを覚えているという。郷里の埼玉県熊谷は8月15日の前夜、既に日本政府がポツダム宣言受諾の意向を伝えたにもかかわらずB29の大群の猛爆を受け、死屍累々の焦土と化した。ほかに畑正憲、松本零士、ちばてつや、勝目梓の各氏が忘れがたい戦争体験をこもごもに語っている。(講談社 1400円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  2. 2

    農水省ゴリ押し「おこめ券」は完全失速…鈴木農相も「食料品全般に使える」とコメ高騰対策から逸脱の本末転倒

  3. 3

    TBS「ザ・ロイヤルファミリー」はロケ地巡礼も大盛り上がり

  4. 4

    維新の政権しがみつき戦略は破綻確実…定数削減を「改革のセンターピン」とイキった吉村代表ダサすぎる発言後退

  5. 5

    3度目の日本記録更新 マラソン大迫傑は目的と手段が明確で“分かりやすい”から面白い

  1. 6

    国分太一“追放”騒動…日テレが一転して平謝りのウラを読む

  2. 7

    粗品「THE W」での“爆弾発言”が物議…「1秒も面白くなかった」「レベルの低い大会だった」「間違ったお笑い」

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    「おまえになんか、値がつかないよ」編成本部長の捨て台詞でFA宣言を決意した

  5. 10

    巨人阿部監督の“育成放棄宣言”に選手とファン絶望…ベテラン偏重、補強優先はもうウンザリ