「喜知次」乙川優三郎著
12歳の小太郎に6歳の妹・花哉ができた。藩の祐筆頭を務める父が、江戸屋敷の火事で両親を失った花哉を養子にしたのだ。小太郎には花哉が魚の「喜知次」に似て見える。小太郎は、親友で郡奉行の次男の台助から、藩内で一揆が起きていると教えられる。不作が続いた上に、江戸屋敷再建のため年貢の取り立てが厳しくなり、一揆が起きたという。仲間の猪平が学問所に顔を見せないのも、郡奉行下役の父親が、現地に出向いているのが理由らしい。数日後、猪平を訪ねた小太郎と台助は、猪平の父親の死を知る。猪平は暗殺を疑い、仇討ちを誓う。
武士として目覚めた小太郎の成長と、義妹への思いを描く時代長編。(徳間書店 710円+税)