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宮城安総工作舎アートディレクター

1964年、宮城県生まれ。東北大学文学部仏文科卒。1990年代から単行本、企業パンフレット、ポスター、CDジャケットなど幅広く手掛ける。

“作品に触れる”造本に驚嘆

公開日: 更新日:

「福本潮子作品集 藍の青」福本潮子著 

 現代藍染め作家・福本潮子作品集。1977年から現在まで約40年の仕事を網羅する野心作だ。

 唐突だが、「色」を扱った経験のある方なら共感いただけると思う。

「青」のグラデーションには抗いがたい心地よさが潜む。人間の進化の過程で、空や海など自然界の「青」に対する親和性を獲得した結果だろうか? ゲーテ、カンディンスキー、ピカソ、イブ・クラインなど「青の精神性」に引き付けられた作家、画家は多い。本作家もまた青の魔力に魅せられた芸術家の一人だ。

「藍」は植物由来の染料。江戸以降、衣類、暖簾、今日身近なところではジーンズ等、大衆の生活にすっかり溶け込んだ素材。一方、藍染めに欠かせない「絞り」は、最古の染色技法の一つ。

「馴染みの素材や技法」とくれば、おのずと日常使いの「工芸品」を想像するが、本作家は正反対、自律した表現としての「空間アート作品」を志向する。解説によれば、藍と出合う以前、「青い絵」ばかり描いていた画家志望の学生時代から「青の探求」は始まっていたという。

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