【憲法と民主主義】安保法制を再び問題提起する

公開日: 更新日:

「憲法と民主主義の論じ方」長谷部恭男、杉田敦著

 昨年の安保法制問題で世間に知られた憲法学者と政治学者。長谷部氏はもともと改憲論者ながらも、安倍政権のやり方に真っ向から異を唱えてブレない存在として世間の信頼を集めた。杉田氏は護憲派で原発問題に国民投票を呼びかけるリベラル派。本書はこの両氏の対談である。

 衆院憲法審査会の自民党参考人である長谷部氏が安保法案を「違憲」と断定したときに、明らかに世論の潮目が変わった。それ以来、両氏はしばしばコンビのかたちでメディアにも登場してきた。そして、安保法制推進派は法律の是非は法学者が決めるのではなく政治が決めるのだとする議論を展開。国政の重大事項については司法は判断せず、立法・行政に任せるべきだとする「統治行為論」を展開してきた。

 これに対して長谷部氏は「政権がそう思いたいという単なる希望的観測」と一刀両断。2014年の集団的自衛権容認の閣議決定以後、安保法案を作るために専門家による研究会も審議会も公開で議論していないという異常事態が続いている。これこそは国政の一大事というのである。

(朝日新聞出版 1300円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ビートたけし「俺なんか悪いことばっかりしたけど…」 松本人志&中居正広に語っていた自身の“引き際”

  2. 2

    阪神・藤川監督が酔っぱらって口を衝いた打倒巨人「怪気炎」→掲載自粛要請で幻に

  3. 3

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  4. 4

    中居正広氏は37年で築いた資産喪失の瀬戸際…不動産複数所有で倹約家も「違約金+α」の脅威

  5. 5

    フジテレビにとって“CMスポンサー撤退”より危険な「致命的リスク」とは? 企業危機管理の専門家がズバリ

  1. 6

    “天皇”日枝久氏しか知らない「ジャニーズ圧力」「メリーの激昂電話」 フジテレビは今こそ全容解明を

  2. 7

    橋本環奈『おむすび』はNHK朝ドラ視聴率ワーストほぼ確定…“パワハラ疑惑報道”が致命傷に

  3. 8

    巨人の50億円助っ人マルティネス 真面目でお人よしなだけに深刻な「2つの重圧」

  4. 9

    “かつての名門”武蔵の長期低落の深刻度…学習塾「鉄緑会」の指定校から外れたことも逆風に

  5. 10

    リアル店舗にこだわり続けるホビーショップ 経営危機からのV字回復は「脱 安売り」だった