「この君なくば」葉室麟著

公開日: 更新日:

 日向の小藩・伍代藩で私塾「此君堂」を開いていた国学者、鉄斎の娘・栞は、父亡きあと門弟の譲に和歌の指導を続けていた。鉄斎は娘の思いをくみ、栞をいずれ譲の嫁にと考えていたようだが、藩主・忠継の意向で譲は名家の三女由里を嫁に迎える。

 しかし、由里が幼い一人娘を残して早逝。秘めたる思いを胸に、譲に和歌の指導を続ける栞だが、藩内の尊王攘夷派の動きを耳にするにつけ、開国派と思われている譲の身辺を心配する。さらに譲に由里の妹・五十鈴との再婚話が持ち上がっていることを知り、栞の心は乱れる。文久2(1862)年、譲は忠継の密命を受け京に向かう。

 名手が幕末の騒乱を生きる男女の思いを描いた時代長編。(朝日新聞出版 620円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    秋季関東大会で横浜高と再戦浮上、27連勝を止めた「今春の1勝」は半年を経てどう作用するか

  2. 2

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  3. 3

    公明票消失で自民衆院「東京選挙区」が全滅危機…「萩生田だけは勘弁ならねぇ」の遺恨消えず

  4. 4

    星野監督時代は「陣形」が存在、いまでは考えられない乱闘の内幕

  5. 5

    「自維連立政権」爆誕へ吉村代表は前のめりも、早くも漂う崩壊の兆し…進次郎推しから“宗旨変え”

  1. 6

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  2. 7

    国民民主党・玉木代表「維新連立入り」観測に焦りまくり…“男の嫉妬”が見苦しすぎる

  3. 8

    自民「聞いてないよォ」、国民・玉木氏「どうぞどうぞ」…首相指名の行方はダチョウ倶楽部のコント芸の様相

  4. 9

    号泣の渋野日向子に「スイングより、歩き方から見直せ!」スポーツサイエンスの第一人者が指摘

  5. 10

    「ガルベスと牛乳で仲直りしよう」…大豊泰昭さんの提案を断固拒否してそれっきり