「何かのためではない、特別なこと」平川克美著

公開日: 更新日:

 映画監督・成瀬巳喜男が、戦後まもない日本を描いた「浮雲」を見ていたら、戦後の街並みの風景に見覚えがあった。だが、それは昭和20、21年ごろの風景で、25年生まれの著者が見ているはずはない。それなのに既視感があるのはどういうことだろう。それは親たちの体に残る戦争の記憶、「死と隣り合わせの飢餓や恐怖」が、戦争を知らない著者の体の中に記憶されたということなのか。

 親の世代が次の世代に教えようとしたのは、何が何でも「生き延びよ」ということだったと、著者は思う。還暦を過ぎて、進歩や成長といった青年期特有の思考から初めて見えてきたことをつづったエッセー。(平凡社1500円+税)



最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    高画質は必要ない? 民放各社が撤退検討と報じられた「BS4K」はなぜ失敗したのですか?

  2. 2

    大手家電量販店の創業家がトップに君臨する功罪…ビック、ノジマに続きヨドバシも下請法違反

  3. 3

    落合監督は投手起用に一切ノータッチ。全面的に任せられたオレはやりがいと緊張感があった

  4. 4

    自民党総裁選の“本命”小泉進次郎氏に「不出馬説」が流れた背景

  5. 5

    「二股不倫」永野芽郁の“第3の男”か? 坂口健太郎の業界評…さらに「別の男」が出てくる可能性は

  1. 6

    今思えばあの時から…落合博満さんが“秘密主義”になったワケ

  2. 7

    世界陸上「前髪あり」今田美桜にファンがうなる 「中森明菜の若かりし頃を彷彿」の相似性

  3. 8

    三谷幸喜がスポーツ強豪校だった世田谷学園を選んだワケ 4年前に理系コースを新設した進学校

  4. 9

    広陵暴力問題の闇…名門大学の推薦取り消し相次ぎ、中井監督の母校・大商大が「落ち穂拾い」

  5. 10

    佐々木朗希いったい何様? ロッテ球団スタッフ3人引き抜きメジャー帯同の波紋