「肉筆で読む作家の手紙」青木正美著

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 古書店主の著者は、作家らの書簡や原稿など多くの自筆物を収集。まずはその収集の始まりとなった島崎藤村の最晩年の手紙を取り上げる。

 昭和17年4月、71歳だった藤村が谷崎潤一郎とも交遊があった大谷嘉助という人物に宛てた手紙で、「老躯に鞭うち」最後の長編に取り掛かっている近況と、切迫した時局への憂いが書かれている。

 その他、小林多喜二に請われて彼の作品への批評をしたためた志賀直哉の手紙、のちに「日本百名山」で名を残す深田久弥が軍隊時代に改造社の編集者に送った、まるで目の前にいる人物に話しかけているかのような書信など。

 29人の手紙に、彼らの文学への思いや私生活を垣間見る文学エッセー。(本の雑誌社 2000円+税)





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