「『大正』を読み直す」子安宣邦著

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「大正デモクラシー」の発火点を、近代日本最初の民衆騒擾「日比谷事件」(1905年)とすると、「米騒動」(1918年)をその結節点と見ることができる。こうした歴史的局面で、集合し抗議の意思表示をする不特定の社会的集合体「大衆」が存立した「大正」は、「大衆社会」成立の時代だと著者は説く。

 本書は、大正前夜の「大逆事件」をはじめ、幸徳秋水の「直接行動論」、大杉栄の思想、河上肇の「貧乏物語」などを読み解きながら、昭和の全体主義を生み落とした「大正」について考察した歴史テキスト。「大衆的喝采」なしには「全体主義」は成立しない。大正の「大衆社会」の早期的成立が昭和の全体主義成立、そして現代へとつながる背景を論じる。(藤原書店 3000円+税)


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