著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「娘と嫁と孫とわたし」藤堂志津子著

公開日: 更新日:

 タイトルは軽いが、中身は濃い。家族小説をお好きな読者に、自信をもってすすめる傑作小説だ。

 帯の惹句がうまい。「いじのわる~い、しかもケチな実の娘」「血のつながりはないけど、けなげでやさしい息子の嫁」「これからずっと、一緒に生活するなら、どっちが幸せ?」とくるのだ。こういう内容で、作者が藤堂志津子なら、これだけで読みたくなる。もちろんこれは帯コピーのためにわかりやすくしただけで、藤堂志津子の小説であるから、実際はそう単純ではない。いじわるでケチな実の娘にもいいところはあり、けなげでやさしい息子の嫁にもいじわるなところはある。

 そういうふうに人間は複雑で、その微妙な奥行きの深さを本書は鮮やかに描いている。

 それにもうひとつ、女性を中心にした小説によくある展開だが、登場する男どもがろくでもないやつばかり。45歳で独身の秋生という結構いい男も出てくるけれど、これは例外で、だいたいダメ男が多い。男どもがこのように頼りにならないから、女性陣が頑張らなくてはならないという構造が、この手の小説の特徴だが、藤堂志津子の本書も例外ではない。

 だから小説の評価を離れて言えば、男性読者としては、複雑な気持ちになる。ここにあるのは母や妻や娘の言い分で、男にも男の言い分があるはずなのに、おまえたちがだらしがないからこんなことを言われるのだ、と言いたくなってくるのである。(集英社 500円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「左膝の半月板が割れ…」横綱・豊昇龍にまさかのアクシデントで稽古中止

  2. 2

    松山千春がNHK紅白を「エコひいき」とバッサリ!歌手の“持ち時間”に求めた「平等」の正当性を考える

  3. 3

    巨人オーナーから“至上命令” 阿部監督が背負う「坂本勇人2世育成&抜擢」の重い十字架

  4. 4

    高市政権が抱える統一教会“爆弾”の破壊力 文春入手の3200ページ内部文書には自民議員ズラリ

  5. 5

    前橋市長選で予想外バトルに…小川晶前市長を山本一太群馬県知事がブログでネチネチ陰湿攻撃のナゼ

  1. 6

    チンピラ維新の「国保逃れ」炎上やまず“ウヤムヤ作戦”も頓挫不可避 野党が追及へ手ぐすねで包囲網

  2. 7

    阿部監督のせい?巨人「マエケン取り失敗」の深層 その独善的な振舞いは筒抜けだった

  3. 8

    バタバタNHK紅白 高視聴率でも今田美桜、有吉弘行らMC陣は負担増「出演者個々の頑張りに支えられた」

  4. 9

    菊池風磨のカウコン演出に不満噴出 SNS解禁でSTARTO社の課題はタレントのメンタルケアに

  5. 10

    ロッテ前監督・吉井理人氏が大谷翔平を語る「アレを直せば、もっと良く、170kmくらい投げられる」