テレビとジャーナリズム ますます露骨化する報道への圧力

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「テレビと原発報道の60年」七沢潔著

 NHKのドキュメンタリー制作者としてチェルノブイリ以来の原発問題のプロとして知られた著者。しかし「3・11」までの10年間、東電幹部らが加わったNHK経営委員会に目をつけられたか、現場を干されて放送文化研究所の閑職に。ところが「3・11」で急に現場から呼び出し。実はこのときまでNHKのドキュメンタリー畑には原発のわかる現役がいなくなっていたのだ。本書は過去5年間に書いた大小の記事に書き下ろしを加えた原発報道論。

 震災勃発の翌日、取るものも取りあえず車で現場取材に向かった体験リポートに始まり、現場の目ならではの論文が目白押し。活発だった原発報道が1年ほどで「原子力ムラ」の圧力に押されて次第に衰えていくさまを自己検証した論文では、プルトニウムよりはるかに短い「記憶の半減期」があると指摘。危険が起こったときに正常だと思い込みたがる日本人の「正常性バイアス」にも警鐘を鳴らす。安倍政権にゴマをする一方のNHKに辛うじて残った正統派の気骨。(彩流社 1900円+税)


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