テレビとジャーナリズム ますます露骨化する報道への圧力

公開日: 更新日:

「テレビと原発報道の60年」七沢潔著

 NHKのドキュメンタリー制作者としてチェルノブイリ以来の原発問題のプロとして知られた著者。しかし「3・11」までの10年間、東電幹部らが加わったNHK経営委員会に目をつけられたか、現場を干されて放送文化研究所の閑職に。ところが「3・11」で急に現場から呼び出し。実はこのときまでNHKのドキュメンタリー畑には原発のわかる現役がいなくなっていたのだ。本書は過去5年間に書いた大小の記事に書き下ろしを加えた原発報道論。

 震災勃発の翌日、取るものも取りあえず車で現場取材に向かった体験リポートに始まり、現場の目ならではの論文が目白押し。活発だった原発報道が1年ほどで「原子力ムラ」の圧力に押されて次第に衰えていくさまを自己検証した論文では、プルトニウムよりはるかに短い「記憶の半減期」があると指摘。危険が起こったときに正常だと思い込みたがる日本人の「正常性バイアス」にも警鐘を鳴らす。安倍政権にゴマをする一方のNHKに辛うじて残った正統派の気骨。(彩流社 1900円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは