日本の漫画の「間、引き、瞳の炎」が、世界を魅了

公開日: 更新日:

 世界で躍進する日本の「漫画」。漫画がきっかけで日本に興味を持ち、観光や留学で来日する外国人も増えている。いったいなぜ、日本の漫画が世界で愛されるのか。志波秀宇著「まんが★漫画★MANGA」(三一書房 1500円+税)では、元小学館コミックス編集室長が、その秘密をひもといていく。

 日本の漫画が世界市場に打って出た1974年以降に連載を開始した作品に限定して、売り上げ部数を見てみると、世界一売れた漫画が現在も連載中の「ONE PIECE」で3億8000万部、2位が「ドラゴンボール」で2億3000万部、3位が「NARUTO-ナルト-」で2億部と、日本漫画が上位を独占している。さらに、上位40作品中でも、日本漫画が37作品を占めるという席巻ぶりなのだ。

 世界の漫画の中ではアメリカンコミックも人気が高いが、「スーパーマン」や「スパイダーマン」「バットマン」など、50年以上にわたりスーパーヒーロー路線から抜け出せていない。その背景にあるのがアメリカのコミックコード委員会による規制で、子どもに有害とされる漫画を発行した出版社が、軒並み潰されてしまったからだという。

 その点、日本の漫画はほぼ自由な表現が許されている。また、薄い漫画雑誌に1人の漫画家の作品が掲載されるアメリカとは異なり、日本では分厚い1冊の漫画雑誌の中に複数の漫画家の作品が掲載される。このため、漫画家が自然と切磋琢磨し、画力や表現力が進化する。

 さらに、日本的な時間・空間の表現方法である“間”や“引き”が漫画に生かされていることも、日本の漫画が面白い要素だという。例えば、ヒロインが運命の人に出会う瞬間、ヒーローが衝撃の事実を知る瞬間、日本の漫画では次のページをめくるまで答えが描かれないことが多い。ハラハラドキドキして、次のページをめくらずにいられない仕掛けがあるわけだ。

 他にも、瞳の中に炎を描いた「巨人の星」、静寂を“シーン”で表現した手塚治虫など、日本独特の漫画表現も探っていく。久しぶりに、じっくりと漫画を読んでみたくなる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    武田鉄矢「水戸黄門」が7年ぶり2時間SPで復活! 一行が目指すは輪島・金沢

  2. 2

    生田絵梨花は中学校まで文京区の公立で学び、東京音大付属に進学 高3で乃木坂46を一時活動休止の背景

  3. 3

    未成年の少女を複数回自宅に呼び出していたSKY-HIの「年内活動辞退」に疑問噴出…「1週間もない」と関係者批判

  4. 4

    2025年ドラマベスト3 「人生の時間」の使い方を問いかけるこの3作

  5. 5

    2025年は邦画の当たり年 主演クラスの俳優が「脇役」に回ることが映画界に活気を与えている

  1. 6

    真木よう子「第2子出産」祝福ムードに水を差す…中島裕翔「熱愛報道」の微妙すぎるタイミング

  2. 7

    M-1新王者「たくろう」がネタにした出身大学が注目度爆上がりのワケ…寛容でユーモラスな学長に著名な卒業生ズラリ

  3. 8

    松任谷由実が矢沢永吉に学んだ“桁違いの金持ち”哲学…「恋人がサンタクロース」発売前年の出来事

  4. 9

    高市政権の積極財政は「無責任な放漫財政」過去最大122兆円予算案も長期金利上昇で国債利払い爆増

  5. 10

    農水省「おこめ券」説明会のトンデモ全容 所管外の問い合わせに官僚疲弊、鈴木農相は逃げの一手