「裁判所ってどんなところ?」森炎著
若者向けに裁判所について解説した一般教養入門書。
明治期、西洋の諸国家の仕組みを輸入することで初めて日本に裁判所が生まれた。ドラマで見るような江戸時代の「遠山の金さん」らの仕事ぶりは裁判ともいえるが、彼らが働いていた場所は裁判所とはいえないという。なぜなら、裁判所の本質とは、政治権力から独立していることだからだ。
明治初期は試行錯誤が続いていたが、明治半ばに日本人巡査が来日したロシア皇太子に傷害を負わせた「大津事件」の裁判で、裁判所が政府の圧力をはね返し、司法権の独立を獲得した。そうした歴史から、司法制度の仕組みや裁判官の素顔、そして裁判制度の裏側まで、憲法学や法哲学の考え方にも触れながら講義。(筑摩書房 820円+税)