「さすらいの皇帝ペンギン」高橋三千綱著
作家の楠三十郎にテレビ局からオファーがあった。開局30周年記念のドキュメンタリー番組で南極のリポーターをやってほしいという。テレビの仕事は断るつもりだったが、7年前に雑誌の取材で南極に向かったものの、観光船の座礁で挫折した楠は、「南極」と聞いていやいや引き受けた。経由地のプンタアレナスの毛糸屋で買い物をしたら、そこの孫娘が鳥籠に入った皇帝ペンギンの雛を持ってきた。店の客が置いていった雛を南極に帰してほしいということらしい。だが、皇帝ペンギンのコロニーがあるのは、南極でも最も寒くて孤立した氷棚の上だ。「コドク」と名付けペンギンを帰すための悪戦苦闘の日々を描いた長編。
(集英社 1600円+税)