「アラブの春」では説明できないシリアの混迷

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「シリアからの叫び」ジャニーン・ディ・ジョヴァンニ著、古屋美登里訳

 紛争取材にとりつかれてしまう記者がいる。著者もその一人。90年代初頭にセルビア紛争取材に入り、以来、「マラリアみたいに」紛争をめぐる「熱病」がとりついたという。冒険心ではない。犠牲にされる女性、子ども、年寄りへの涙。平然と女たちを犯す男たちへの怒り。シリアの庶民は砲弾の降る中で暮らし、狙撃手のいる近所で眠り、恐怖と隣り合わせの日常を送る。その現実へのいたたまれない思いが著者を駆り立てる。

 本書には声高な政治批判はない。大地に生きる人々の不安と苦しみを同じ目で共にする、その圧倒的な存在感が行間からあふれだす。(亜紀書房 2300円+税)

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