スミレは「地方出身のしっかりものの女子大生」!?

公開日: 更新日:

「雑草キャラクター図鑑」稲垣栄洋著

 私たちは雑草とひとくくりに呼んでしまうが、彼らはそれぞれが実に個性的で人間くさい存在だという。植物にとっては過酷な環境である道端や田畑、空き地など、人間と同じ場所で暮らすことを選択した雑草は、独特の進化を遂げた特殊な植物なのだ。そんな雑草たちの暮らしぶりを、キャラクター化して紹介してくれるおもしろ図鑑。

 例えば、野の花のイメージがあるスミレは「地方出身のしっかりものの女子大生」。都会で生き抜くため、そのタネには「エライオソーム」というゼリー状の物質がついている。これをエサにするアリをパートナーにすることで、タネを遠くに運んでもらっているのだとか。

 ほかにも、四季のある日本の環境になじめず、ライバルとの競争にも強くないため都会でしか生きられない「セイヨウタンポポ」は「ヨーロッパ出身の個人主義者」、根から毒性の物質を分泌して周りの植物をやっつけ野原を占拠する侵略的外来生物の「セイタカアワダチソウ」は、某大統領を彷彿させる「アメリカからやってきた超アグレッシブな実業家」、筋金入りの打たれ強さで靴の底にタネをくっつけて繁殖する「ツメクサ」は、「ビジネス街で飛び込み営業をする営業マン」など。

 キャラクター化した75種の雑草をヒトコマ漫画で紹介しながら、その驚くべき生き残り戦術を解説してくれる。

 畑にはびこると防除が難しいが、一方で草餅やモグサに使われるヨモギなどを例に、そもそも雑草とは何かといった基本から、いざ自分で育ててみようとしてタネをまいても芽が出てこないのに、草取りをすると増える雑草の不思議などにも言及。弱さと強さの両面を持ちながら、けなげに生きる雑草。足元に広がるその知られざる不思議ワールドのガイドブック。(誠文堂新光社 1600円+税)

【連載】発掘おもしろ図鑑

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    ドジャース佐々木朗希「今季構想外」特別待遇剥奪でアリゾナ送還へ…かばい続けてきたロバーツ監督まで首捻る

  4. 4

    中日・中田翔がいよいよ崖っぷち…西武から“問題児”佐藤龍世を素行リスク覚悟で獲得の波紋

  5. 5

    西武は“緩い”から強い? 相内3度目「対外試合禁止」の裏側

  1. 6

    「1食228円」に国民激怒!自民・森山幹事長が言い放った一律2万円バラマキの“トンデモ根拠”

  2. 7

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも

  3. 8

    辞意固めたか、国民民主党・玉木代表…山尾志桜里vs伊藤孝恵“女の戦い”にウンザリ?

  4. 9

    STARTO社の新社長に名前があがった「元フジテレビ専務」の評判…一方で「キムタク社長」待望論も

  5. 10

    注目集まる「キャスター」後の永野芽郁の俳優人生…テレビ局が起用しづらい「業界内の暗黙ルール」とは