「dele ディーリー」本多孝好氏

公開日: 更新日:

 今や自分の分身ともいうべきスマホやパソコン。そこには個人のプライバシーが詰まっているが、自分が死んだ後、家族や他人の目にさらされるとしたらどうするだろうか?

 本書は、そんな死後の記録<データ>をめぐる連作ミステリー。タイトルのdeleとは、校正用語で削除を意味する。

「私はパソコンで小説を書いているのですが、作品に使わなかったフレーズもそのまま残しているんですね。小説はある程度覚悟をして世に出すのでいいんですけど、それ以前の言葉は生身に近いものだから、誰にも見られたくないんです。とはいえ、自分が死んだらきっと家族は見るだろう、と(笑い)。そのとき、見せない方法はないだろうかと思ったのが執筆のキッカケです」

 坂上圭司が所長を務める「dele.life」は、死後、誰にも見られたくないデータを依頼人に代わってデジタルデバイスから削除する業務を請け負っている。依頼人が設定した時間を超えてパソコンやスマホが操作されなければ、圭司のノートパソコンに信号が届く。3カ月前に雇われた真柴祐太郎の仕事は、車いすの圭司に代わって依頼者の死亡確認をすることだった。しかし、データ削除に至る過程で、2人は図らずも依頼人の人生や秘密に触れていくことになる。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 2

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    安倍元首相銃撃裁判 審理前から山上徹也被告の判決日が決まっている理由

  5. 5

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  1. 6

    マツコ・デラックスがSMAP木村拓哉と顔を合わせた千葉県立犢橋高校とは? かつて牧場だった場所に…

  2. 7

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」