「dele ディーリー」本多孝好氏

公開日: 更新日:

「私たちは日々、スマホやパソコンといったデジタルデバイスの中にいて、手軽に使っていますが、自分としては意味を持たないデータがどんどん蓄積していき、自分の死後、それを見た人が勝手に“私”という人間像を作り上げる可能性って高いと思うんですよ。残されたデータはいわば疑似的人格。記憶とは違う“私”を勝手に見つけたかもしれないと思うと違和感を覚えますし、戸惑う遺族もいるのではないでしょうか」

 収録の「シークレット・ガーデン」の依頼者は、大手ゼネコン取締役の男性76歳。死亡確認のためもぐりこんだ葬儀で、祐太郎は「故人の妻だ」という若い女性に出くわす。莫大な遺産が絡む事柄だけに、祐太郎は「中を確認したほうがいい」と圭司に忠告する。果たしてデータに収められていたのは自称・妻とは別の女性の写真で、やがて殺人事件へと発展していく。

「この物語は、最初に考えたものです。現実を考えればあるはずなのに、データ上ではまったく見当たらないという、現実とデータのギャップを端的に表した、deleらしい物語になったと思います」


 圭司は職務に忠実で、これまで依頼データの中身を見ることなく、淡々と削除してきた。一方、祐太郎は、故人の家族や交友関係に触れるうち、残すことによって救われる人もいると主張して譲らない。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    アッと驚く自公「連立解消」…突っぱねた高市自民も離脱する斉藤公明も勝算なしの結末

  2. 2

    クマが各地で大暴れ、旅ロケ番組がてんてこ舞い…「ポツンと一軒家」も現場はピリピリ

  3. 3

    「えげつないことも平気で…」“悪の帝国”ドジャースの驚愕すべき強さの秘密

  4. 4

    安倍元首相銃撃裁判 審理前から山上徹也被告の判決日が決まっている理由

  5. 5

    ドジャース大谷翔平が直面する米国人の「差別的敵愾心」…米野球専門誌はMVPに選ばず

  1. 6

    マツコ・デラックスがSMAP木村拓哉と顔を合わせた千葉県立犢橋高校とは? かつて牧場だった場所に…

  2. 7

    自民党は戦々恐々…公明党「連立離脱」なら次の衆院選で93人が落選危機

  3. 8

    今オフ日本史上最多5人がメジャー挑戦!阪神才木は“藤川監督が後押し”、西武Wエースにヤクルト村上、巨人岡本まで

  4. 9

    万博協会も大阪府も元請けも「詐欺師」…パビリオン工事費未払い被害者が実名告発

  5. 10

    ドジャース佐々木朗希の抑え起用に太鼓判も…上原浩治氏と橋本清氏が口を揃える「不安要素」