夏休み自由研究本特集

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「理系アタマがぐんぐん育つ科学の実験大図鑑」ロバート・ウィンストン著、西川由紀子訳

 夏休みも終盤。子どもたちもそろそろ、宿題の山にとりかかり始めたころだろうか。夏休みの宿題で、親にとっても子どもにとっても、最も頭痛の種であり、腕の見せどころなのが自由研究だろう。そこで、今週は今からでも間に合う自由研究のガイドブックを紹介する。子どもと一緒に手にすれば、大人もきっとハマる面白本ばかりだ。

 英国の名物大学教授が、身の回りの品々だけで出来る科学の実験を紹介してくれるビジュアルテキスト。

 食器用洗剤を利用して小さな手作りボートを動かす「せっけんボート」など、ある世代には懐かしい遊びだった実験をはじめ、スマートフォン特有のシャカシャカとした安っぽい音質を取り除き、ほぼすべての音を耳まで直接届けることができる今どきの子どものための「スマートフォンスピーカー」など、28の実験(作り方)の手順を分かりやすく解説。その上で「どうしてこうなるの?」とその原理や、その理論で説明できる自然現象や、理論を応用して作られた製品なども紹介する。

 例えば、レモン果汁で文字や絵をかいた紙を熱すると、乾いて見えなくなっていた文字や絵が茶色く浮かび上がるあの「あぶり出しインク」。年賀状や宝の地図を描いて楽しんだ人も多いと思うが、その原理を正確に答えられる人は少ないのでは。

 実は、レモン果汁のクエン酸が紙を構成するグルコース分子の結合を弱め、その一部を解き放つ。その紙が170度以上に温められると、この解き放たれたグルコース分子が「カラメル化反応」という化学反応を引き起こし、茶色の化合物が新たに作られるから、描いたものが再び見えるようになるのだとか。

 他にも、発芽した豆がわずかな太陽の光をたよりに暗い箱の中に作られた迷路を乗り越えていく様子を観察するその名も「靴箱プランター」や、鍾乳石が日々大きくなるのを観察する「きらめき鍾乳石」、アイスの棒を接着剤で張り合わせるだけなのに何個ものレンガの荷重に耐えられる「最強の橋」など。

 子どもたちを科学の冒険へと誘い、手伝う大人たちも知らないうちに夢中にさせるお薦め本。

 (新星出版社 2400円+税)

「いちばんやさしい天気と気象の事典」武田康男著

 夏休みの調べ学習・自由研究の「王道」ともいえる天気と気象のことならなんでも分かる参考書。

「夏の猛暑はどうして起こる?」「風が吹くのはどうして?」「気圧って何?」「気圧と天気はどんな関係?」など、人が分かっているようで実はよく知らない天気と気象の知識を、写真や図を示しながら、ひとつひとつ解説。

 天気図から実際の天気を予想してみたり、書店で売っている地上天気図用紙にラジオの気象通報を記入して自分で天気図を描く方法、青空や夕日を作る実験、簡単な気圧計の作り方など、手軽に取り組め、体験できるコーナーも充実。子どもも大人も天気予報を見るのがきっと楽しくなるはず。

 (永岡書店 850円+税)

「夏休み!発酵菌ですぐできるおいしい自由研究」小倉ヒラク著

 菌を育てて、食べ物を作る――食いしん坊にはぴったりな自由研究のススメ。

 手始めに、「乳酸菌」の力を使って、牛乳をヨーグルトに変身させてみる。殺菌のため沸騰直前まで加熱して45度まで冷ました牛乳500ミリリットルに、プレーンヨーグルトを大さじ2杯入れて、観察をしやすくするためガラス容器で保存。今の時期なら12時間ほどで完成するというから、夏休みが終わる直前に始めても間に合う。

 その他、「納豆菌」で納豆や、味噌から手づくりする味噌汁、「麹菌」を使って甘酒、「酵母菌」でパンなど。その作り方から、それぞれの菌の働きや力の秘密を解説してくれる。

 (あかね書房 1000円+税)

「中学生理科の自由研究パーフェクト」成美堂出版編集部編

 こちらは他の3冊に比べてより本格的な、中学生の教科書に即した実験ガイドブック。

 レンズがないのに撮影出来て、写ったものが縦や横に伸びるピンホールカメラ、アルファ線やベータ線など高速で空気中をただよう放射線の観測装置、台所用のスチールウールなどを使用して作る「ほかほかカイロ」、ブロッコリーやタマネギなどの野菜からDNAを取り出す方法、そして地震の時に起きる地面の液状化現象の再現や雨が酸性雨になっているか調べる方法など。物理、化学、生物、地学、環境など各分野別に43の実験を紹介。それぞれの実験をもとにしたリポートの実例を挙げながら、作成ポイントまで丁寧に指導してくれる頼りになる一冊だ。

 (成美堂出版 900円+税)

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