著者のコラム一覧
北上次郎評論家

1946年、東京都生まれ。明治大学文学部卒。本名は目黒考二。76年、椎名誠を編集長に「本の雑誌」を創刊。ペンネームの北上次郎名で「冒険小説論―近代ヒーロー像100年の変遷」など著作多数。本紙でも「北上次郎のこれが面白極上本だ!」を好評連載中。趣味は競馬。

「ビンボーの女王」尾崎将也著

公開日: 更新日:

 ヒロインの立花麻衣子はテレビのアシスタントディレクター。ほとんどブラック企業に近い労働に悲鳴を上げて、ついに退職。ところが辞めてみると、再就職はなかなか厳しい。しかも住まいも失ったので、ネットカフェに寝泊まりしながら、日銭欲しさにティッシュ配りのアルバイトの日々。つまり突然、ネットカフェ難民になるのだ。そういう貧困女子の生活が、これでもかこれでもかと描かれていく。親に頼れないのには事情がある。

 娘を勝手に連帯保証人にしたために母親の借金を背負わされたのである。そんな母親には頼れない。麻衣子はひとりで生きていかざるを得ない。というわけで、ヒロインの苦闘の日々が始まっていく。ストーリーの先を紹介するのはマナー違反だが、帯に書いてあることなので、立てこもり事件に巻き込まれる、ということだけは紹介してもいいだろう。このあとの展開が面白いが、いくらなんでもこのあとどうなるかという紹介はぐっと我慢。

 著者は「梅ちゃん先生」などで知られる著名な脚本家で、これが小説の第1作。「小野寺の弟・小野寺の姉」の西田征史、「犯罪者」「天上の葦」の太田愛、「永い言い訳」の西川美和など、他ジャンルで活躍している人の小説は新鮮な作品が多いものだが、本書も例外ではない。問題は、この人たちはなかなか次作を書いてくれないこと。ほかに本業を持っているから仕方がないけれど、そこをなんとかお願いしたい。

 (河出書房新社 1300円+税)

【連載】北上次郎のこれが面白極上本だ!

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人エース戸郷翔征の不振を招いた“真犯人”の実名…評論家のOB元投手コーチがバッサリ

  2. 2

    「備蓄米ブーム」が完全終了…“進次郎効果”も消滅で、店頭では大量の在庫のお寒い現状

  3. 3

    小芝風花&森川葵はナゼ外れた? 来秋朝ドラ「ばけばけ」ヒロインを髙石あかりが射止めた舞台裏

  4. 4

    オレが立浪和義にコンプレックスを抱いた深層…現役時代は一度も食事したことがなかった

  5. 5

    参政党のあきれるデタラメのゴマカシ連発…本名公表のさや氏も改憲草案ではアウトだった

  1. 6

    阿部巨人が今オフFA補強で狙うは…“複数年蹴った”中日・柳裕也と、あのオンカジ選手

  2. 7

    さや氏の過去と素顔が次々と…音楽家の夫、同志の女優、参政党シンボルの“裏の顔”

  3. 8

    参政党さや氏にドロドロ略奪婚報道の洗礼…同じく芸能界出身の三原じゅん子議員と“お騒がせ”な共通点が

  4. 9

    ドジャース大谷翔平「絶対的な発言力」でMLB球宴どころかオリンピックまで変える勢い

  5. 10

    自民党を待ち受ける大混乱…石破首相は“針のムシロ”のはずが、SNSでは〈#やめるな〉が急拡大