「ドビュッシーはワインを美味にするか?」ジョン・パウエル著 濱野大道訳

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 モーツァルトの曲を聴くとIQが高くなる、楽器を習うと頭がよくなる――本書は、そうした説も含めて、音楽と人間心理に関する多種多様な研究結果をもとに、音楽が人間に与える影響を多面的に解説したもの。

 音楽の種類が客の購買行動に与える実験において、ワイン陳列棚のBGMとしてポップスとクラシックを流した。すると、クラシックが流れているときの購入価格はポップスに比して3倍以上だった。またシドニー市は、駐車場などでたむろする不良たちを追い払うのに、バリー・マニロウの曲を大音量で聴かせるという奇策を打った(マニロウの曲は“ダサい”とされていた)。

 そのほか、音楽と感情の関係、うつや吃音、睡眠障害などに対する音楽療法、映画音楽が観客に与える影響等々、幅広い視野から論じられている。そして、なぜ人類は音楽を愛するのかという、根源的な問いへと迫る。

 英国人らしいユーモアあふれる筆致は読んでいて楽しい。音楽理論を平易に解説した巻末の「やっかいな詳細」も便利。

(早川書房 2000円+税)

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