• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger
湯浅誠
著者のコラム一覧
湯浅誠

社会活動家・法政大学教授。1969年、東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。著書に「ヒーローを待っていても世界は変わらない」「『なんとかする』子どもの貧困」など多数。ラジオでレギュラーコメンテーターも務める。

脳は確信犯の詐欺師だ

「パパは脳研究者 子どもを育てる脳科学」 池谷裕二著/クレヨンハウス1600円+税

 スリリングな育児本。娘が「ママ」と「パパ」、どちらを先に呼ぶかで一喜一憂するような子煩悩な男性による、ほんわかとした育児日記なのだが、実はこのパパが東大の脳研究者という異色本。「しゃべった!」「歩いた!」という子の成長が、脳科学的に見るとどう言えるのかが解説されるので、まともにしゃべれない子どもの中で何が起こっているのかが、とてもよくわかる。そしてこれが、かなりスリリングだ。

 たとえば「脳の神経細胞の数は『おぎゃー』と誕生した瞬間が一番多くて、あとは減っていきます。そして3歳になるまでに約70%の神経細胞を排除します」。

 生物としての人間は、生まれ落ちた先がどんな世界でも適応できるように、無用なほど過剰な神経細胞を持って生まれてくる。3歳になるまでの一日一日は、この世界で生きていく上で何が必要で何が不要かを取捨選択していく日々だというのだ。廃棄される脳神経数、1日あたり約5000万個。

 積み木やパズルで遊ぶことは脳の何を刺激しているのか。ウソをつくことと過去形でしゃべることの共通点。著者が「いつの日か、娘が『おなかが痛い』と訴えてくる日を楽しみにしています」と言うワケ。乳幼児期の虐待やネグレクトが生涯にわたる影響を及ぼしかねないこと。脳の世界は「ピピピのみの純世界」で、脳は確信犯の詐欺師だ……。

 1カ月ごとに娘の成長を記録しながら、できるようになった一つ一つのことについて、脳科学的な解説が加えられていて、それが個人の成長の軌跡であるとともに、脳の発達史にもなっている。さらにその奥には、動物としての人類の、脳の進化の歴史も垣間見える。子どもの何げない所作がとっても神秘的でドラマチックに見えてくる。スリリングとしか言いようがない。

 育児が「女の仕事」だと思っているような男性がいたら、そんな人にこそお薦めしたい。もちろん育児中でなくても、十分に楽しめる一冊。


日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    “元彼”と同時引退? 幻に消えた安室奈美恵の「再婚」報道

  2. 2

    崩れた圧勝皮算用 安倍3選という「終わりの始まり」<上>

  3. 3

    やはり妊娠?デキ婚でもビクともしない前田敦子の“規格外”

  4. 4

    追悼・樹木希林さん 貫いた“奇妙な夫婦愛”と“ドケチ伝説”

  5. 5

    安倍3選で現実味を増す “日本版リーマン・ショック”の到来

  6. 6

    狙われる関ジャニ∞…錦戸&大倉“ベッド写真”流出の裏事情

  7. 7

    シールで聴衆選別…「ヤメロ」コール徹底排除した安倍陣営

  8. 8

    美女とデート報道 田原俊彦は干されても腐らず再ブレーク

  9. 9

    「安倍3選」を市場は無視…日経平均5日続伸でも“カヤの外”

  10. 10

    恫喝して票集めるよりも 討論会用の替え玉を用意したら?

もっと見る