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「人口減少と社会保障」山崎史郎著

 少子高齢化だけではない。ついに現実化した「人口減少」の日本。その未来は?



 昨秋の国勢調査の結果発表で明らかになったのが国勢調査史上初の「人口減少」。少子高齢化は人口の世代構成の変化だが、これでいよいよ日本は「滅び」へと大きく一歩踏み出したことになるわけだ。

 本書の著者は厚労省で地方創生に長年関わり、介護保険制度を立案から施行まで手がけた「ミスター介護保険」。それだけに単に危機感をあおるのではなく、詳しいデータを挙げ、危機の実態を正面から見つめる。

 社会保障を社会保険で支えるか、税で支えるかといった制度設計の基本的な話から始めながらも、学者の講話にならないのは実務家ゆえだろう。

 今後の課題は従来の「縦割り・横並び」を廃し、「効率化・多様化」への切り替え。たとえば介護現場での不要な事務仕事(書類作成など)をICT(情報通信技術)で減らす。また高齢者、障害者、子どもなど従来は縦割りで隔てられていた人々を、「共生型」施設でお年寄りと幼児が一緒に過ごせるようにするなどの工夫を凝らす。さらに保育士と介護福祉士の資格を「相互乗り入れ」の発想にして、ひとりの人材が多機能化できるようにする、などさまざまなアイデアを提案している。

(中央公論新社 880円+税)

「未来の年表」河合雅司著

 出生数減少、高齢化、社会の支え手の不足、そして人口減少。この4つが喫緊の課題という著者は産経新聞論説委員。

 その見立てでは2021年ごろ、介護離職が増大。25年を前に育児と介護の「ダブルケア」が問題化する。そして団塊世代が75歳を越える「25年問題」。その後、40年ごろに死亡数激増で火葬場不足。42年ごろは高齢者数がピークに達し、無年金で身寄りのない高齢者が街にあふれるという。類書にもあるように、本書も人口増加を支えるはずだった団塊ジュニア世代が就職氷河期で挫折したことを重視する。「失われた20年」のつけは大きかったのだ。

(講談社 760円+税)

「中高年シングルが日本を動かす」三浦展著

「下流社会」でヒットを飛ばしたマーケティング専門家が新たに挑む「中高年」。過去30年間で50歳以上は約1・7倍強の増加。世代別のシングル世帯は20代全体では減少、55歳以上では2倍以上だ。本書では「シングル消費」を世代別に読み解く。

 ヤングは男女とも食事が「居酒屋化」。シニアでは「スイーツおじさん」が目立つ。シニアは「カップ麺第1世代」がついにここに入り、ケチャップ、マヨネーズ、ソーセージが大好き。若いときの消費行動をいつまでも引きずるバブル世代のガラパゴス化が目立つわけだ。

 締めくくりはアラフォー世代男女の今後。既婚者では共働きで世帯収入が高く、シングルは親からの支援がいまだにある。問題は非正規雇用の未婚女子の非婚傾向。団塊ジュニア世代は就職氷河期世代でもあり、不安定な状況下で未婚にならざるを得なかったのだ。

(朝日新聞出版 760円+税)

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