誰が五輪やリニアを必要としているのか

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「菱の崩壊」木村勝美著/かや書房

 菱は山口組の代紋を指すが、「六代目山口組分裂の病理と任侠山口組の革命」というこの本を読んでいって、第5章の「五輪とリニアは極道の米櫃」に、なるほどと思った。

 今、リニア新幹線の建設工事をめぐってJR東海と大林組以下のスーパーゼネコンの間で汚職があったことが問題になっている。JR東海のドンの葛西敬之は代表取締役名誉会長という老醜そのものの肩書で跋扈しているが、安倍晋三の財界応援団の団長を自任しているウルトラ右翼だ。

「ZAITEN」の4月号「JR東海『葛西敬之』の研究」によれば、葛西は2月10日にホワイトハウスで行われた安倍とトランプの日米首脳会談を見て、こうほくそ笑んだという。

「安倍さんは気難しいトランプを相手に上手にうちの高速鉄道プロジェクトを売り込んでくれた」

 つまり葛西は、加計学園の加計孝太郎など問題にならないくらいスケール大きく安倍に食い込んでいるのだが、リニア新幹線の談合汚職で東京地検特捜部がどこまでメスを入れるかが注目されるのである。

 総工事費が9兆円を超えるといわれるこの巨大プロジェクトに極道たちが血眼になっている。ほとんどがトンネルなので、残土処理が大問題となる。ゼネコンOBを顧問に雇っている企業舎弟が冗談めかして言ったという。

「残土を運搬したり処分する業者には、こっちが発行するチケットを購入してもらう。10トントラック1台分が3万円でね。このチケットは闇でどんどん刷ったらええんやから、笑いが止まらんよ……」

 処分場の面積で扱える残土量は決まっているわけだが、そんなことは意に介さず、規定よりも高く積み上げてしまえばいいと考えている彼は、こう続けた。

「1万円札を刷る印刷機を手に入れたようなものだ」

 そもそもリニア新幹線など不必要なものである。しかし、ゼネコンと極道にとっては必要なのだ。森友学園や加計学園で官僚を黙らせて、安倍はあれほどいかがわしいことをやっていたのだから、リニアではその何百倍もの汚職をやっているだろう。それはもう疑獄と言っていい。そして、オリンピックもまた誰が必要とし、安倍やゼネコンがどう動いているのかが暴かれなければならない。 ★★★(選者・佐高信)

【連載】週末オススメ本ミシュラン

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