パンをめぐって幼い恋心が少しずつ発展し…

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「うさぎパン」瀧羽麻子著 幻冬舎文庫 495円+税

 恋のきっかけはさまざまだが、そのひとつに「おいしそうに食べる」姿に引かれるというのがある。食べる行為がエロチシズムと結びついているせいかもしれない。本書にも、母親が娘に、なんで父のことを好きになったのかと聞かれ、「あのひと、本当においしそうにものを食べるでしょう?」と答える場面が登場する。本書にはそんな食を通した恋の話が2編収録されている。

【あらすじ】
表題作は、私立の女子中から共学の高校に進学したばかりの優子が主人公。優子は同級生の富田くんを気にかけていた。彼を意識するきっかけになったのはパン。優子が自己紹介でパンが好きだと言って周囲に微妙な空気が漂ったときに、パッと手を挙げて「ぼくも」といったのが富田くんだった。

 それもそのはず、富田くんの家はパン屋で、彼も手伝ってパンを作っているという。パンをめぐって幼い恋心が少しずつ発展していく……。

 併録の「はちみつ」はそのスピンオフ。主人公は、優子の恋を応援してくれた家庭教師の美和の幼なじみで、美和の大学に勤めている桐子。失恋したばかりの桐子は、別れた彼氏が好きだった食べ物を一切受けつけなくなっていた。無理に食べるともどしてしまうのだ。

 あれほど好きだったパンも食べられない。そんなときに現れたのが学生から仙人とあだ名されている浮世離れした吉田先生。ひょんなことから吉田先生とお昼ご飯を一緒に食べるようになって桐子の心は少しずつ変化し、「好きなものを食べると、元気が出ます」と言う彼の一言で、桐子の呪縛は解かれていく。

【読みどころ】
パンの芳ばしい香りが立ちこめてきて、読む者の心もやわらかくほぐしてくれる、心地いい佳編。 <石>

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