• facebook  
  • twitter  
  • Facebook Messenger

50年ぶりに妻がパンを食べる姿を見て…

「しあわせのパン」三島有紀子著/ポプラ文庫 600円+税

 パン屋といえば、町中にあるというのが相場だが、本書の舞台となるのは、北海道の洞爺湖を見渡せる丘の中腹にポツンと立つパン屋。りえと尚の水縞夫妻が営むパンカフェ「カフェ・マーニ」は宿泊もでき、店が供する香り豊かなコーヒーと温かなパンは、訪れる人たちの心を豊かにし、格好の憩いの場所となっている。

【あらすじ】
 羽田空港で恋人に沖縄旅行をすっぽかされた香織は、衝動的に真逆の北海道便に飛び乗る。そして行き着いたのがカフェ・マーニだ。

 ズタズタだった香織の心は、おいしいパンと料理、常連客たちの優しい心遣いで痛みが薄らいでいく。

 母親が家を出ていった事実を受け入れられずに父に反発する小学4年生の未久。そんな父娘の絆をふたたび結びつけるべく、水縞夫妻は未久の母の思いの詰まったポタージュスープをテーブルにのせる。

 結婚して50年。新婚当初、史生がパンを買って帰ると「なんや、パサパサして食べにくい」と言って最後まで食べずに残した妻のアヤ。以来、アヤがパンを食べている姿を見たことがなかった。そのアヤが、カフェ・マーニで出されたパンをおいしそうに食べている。その姿を見て、生きる希望を失ってこの地にやってきたはずの史生の心は、変化を遂げていく――。

【読みどころ】原田知世と大泉洋が夫婦役で共演した同名映画の小説版。映画では主人公の水縞りえ・尚夫婦の微妙な関係はほのめかされる程度だが、本書では尚の日記という形で、2人のバックグラウンドが明かされている。また巻末には、店名の由来となった著者のオリジナル絵本「月とマーニ」がカラーで収録されている。映画を見てから読むと、感慨もひとしお。
<石>

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

最新のBOOKS記事

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    沖縄県知事選で“黒歴史”隠し 佐喜真候補にもう一つの疑惑

  2. 2

    BTSとのコラボ中止に賛否 顔に泥塗られた秋元康“次の一手”

  3. 3

    台湾4割スラッガー王柏融めぐり 巨人vs阪神で争奪戦勃発

  4. 4

    “元彼”と同時引退? 幻に消えた安室奈美恵の「再婚」報道

  5. 5

    屈辱の本拠地負け越し…巨人が東京ドーム嫌いになったワケ

  6. 6

    OBも疑心暗鬼 巨人・由伸監督“続投示唆”から急失速のナゾ

  7. 7

    アマ競技で多発する不祥事 機能不全のJOCに解決できるのか

  8. 8

    狙われる関ジャニ∞…錦戸&大倉“ベッド写真”流出の裏事情

  9. 9

    花田家は崩壊寸前…貴乃花親方は協会批判し妻は見舞い拒否

  10. 10

    K-POPガールズ空前のブーム レコード会社熾烈争奪戦の行方

もっと見る