「『老いない脳』をつくる」石浦章一著

公開日: 更新日:

 人間の脳細胞は、40歳を過ぎると10年で5%ずつ減少していくという。皮膚や内臓の細胞などは年齢を重ねても作られ続けるが、脳の細胞は生まれた瞬間からほぼ増えることはなく、40歳以降は減少する一方。もしも脳細胞の数と脳機能が比例していたとして、40歳で100%の力を発揮していたとすると、10年ごとに5%ずつ脳が機能しなくなっていくことになる。

 しかし、生活習慣によって脳の衰えにあらがうことは可能であると、東大名誉教授で理学博士の著者は言う。脳機能の維持といえば脳トレを思い浮かべるかもしれないが、実は脳を活性化させるのに、とくに重要なのが運動である。週に2~3回、1回30分以上の運動を続けると、単位時間当たりに酸素を取り込む最大量を指す「最大酸素摂取量」が年齢を重ねても維持できる。すると、酸素を体内に送り込む力が保たれ、脳の血流も維持できて脳細胞が活性化し、老いにくい脳になるのだという。

 ストレスを発散する工夫も不可欠だ。脳細胞は増えないが、実は脳の中で短期記憶をつかさどる海馬だけは細胞が増えるという。しかし、ストレスを受け続けると海馬が極端に萎縮し、記憶障害を起こしやすいことも分かっている。

 他にも、三日坊主で終わってもいいので新しいことにチャレンジすること、何らかの目標を達成したら自分に報酬を与えることなども、脳機能の活性化につながると本書。日々の努力なくして脳の機能は維持できないと心得よう。(ワック 920円+税)

【連載】長生きする読書術

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース大谷翔平32歳「今がピーク説」の不穏…来季以降は一気に下降線をたどる可能性も

  2. 2

    高市政権の物価高対策はもう“手遅れ”…日銀「12月利上げ」でも円安・インフレ抑制は望み薄

  3. 3

    元日本代表主将DF吉田麻也に来季J1復帰の長崎移籍説!出場機会確保で2026年W杯参戦の青写真

  4. 4

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  5. 5

    京浜急行電鉄×京成電鉄 空港と都心を結ぶ鉄道会社を比較

  1. 6

    ドジャース佐々木朗希の心の瑕疵…大谷翔平が警鐘「安全に、安全にいってたら伸びるものも伸びない」

  2. 7

    【時の過ぎゆくままに】がレコ大歌唱賞に選ばれなかった沢田研二の心境

  3. 8

    「おまえもついて来い」星野監督は左手首骨折の俺を日本シリーズに同行させてくれた

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾