「図書館島」ソフィア・サマダー著 市田泉訳

公開日: 更新日:

 主人公のジェヴィックは、オロンドリア帝国の南方に位置する紅茶諸島の大農園の跡取り息子。辺境の紅茶諸島に文字は存在しないが、オロンドリア人の家庭教師にオロンドリア語の読み書きを習っていたジェヴィックは、詩や物語に親しむようになっていた。

 22歳のとき父親が急逝し、ジェヴィックはかねて憧れのオロンドリアへ父の代わりに交易に出かけることに。オロンドリアでは、王家の始祖であるアヴァレイ女神を信仰する信徒たちと、「石」に刻まれた言葉を信奉する「石の教団」とが対立していた。

 首都のベインに着いたジェヴィックは、女神をあがめる〈鳥の祭り〉の夜、航海中に出会った少女ジサヴェトの幽霊と出会うのだが、そのことを知った「石の教団」の司祭から聖人を詐称したとして、膨大な書物を収めた「王立図書館」がそびえる島に幽閉されてしまう――。

 書物を愛する青年の成長物語を描いたファンタジーだが、念入りに作り込まれた架空の物語や言葉、地名、人名の豊穣さに圧倒される。(東京創元社 2900円+税)


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    「二刀流」大谷翔平と「記録」にこだわったイチロー…天才2人の決定的な差異

  2. 2

    元フジテレビ長谷川豊アナが“おすぎ上納”告白で実名…佐々木恭子アナは災難か自業自得か

  3. 3

    元フジテレビ長谷川豊氏“危機管理のプロ”が古巣告発は禁じ手? 大反響の動画チャンネル行脚の裏事情

  4. 4

    2人の殿堂入りは確実…大谷翔平&イチロー「軌跡」にこれだけの酷似点

  5. 5

    おすぎの次はマツコ? 視聴者からは以前から指摘も…「膝に座らされて」フジ元アナ長谷川豊氏の恨み節

  1. 6

    26億円投入のお台場巨大噴水事業が「フジ日枝案件」と露見…小池都知事による激怒と錯乱と珍答弁

  2. 7

    “かつての名門”武蔵の長期低落の深刻度…学習塾「鉄緑会」の指定校から外れたことも逆風に

  3. 8

    実にゆったりと楽そうに歌っている感じがする

  4. 9

    「(来季の去就は)マコト以外は全員白紙や!」星野監督が全員の前で放った言葉を意気に感じた

  5. 10

    岩井姉妹らツアールーキーたちを狙い撃ち? まるで嫌がらせ…米女子ゴルフの「厳しい洗礼」はトラウマ級