「図書館島」ソフィア・サマダー著 市田泉訳

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 主人公のジェヴィックは、オロンドリア帝国の南方に位置する紅茶諸島の大農園の跡取り息子。辺境の紅茶諸島に文字は存在しないが、オロンドリア人の家庭教師にオロンドリア語の読み書きを習っていたジェヴィックは、詩や物語に親しむようになっていた。

 22歳のとき父親が急逝し、ジェヴィックはかねて憧れのオロンドリアへ父の代わりに交易に出かけることに。オロンドリアでは、王家の始祖であるアヴァレイ女神を信仰する信徒たちと、「石」に刻まれた言葉を信奉する「石の教団」とが対立していた。

 首都のベインに着いたジェヴィックは、女神をあがめる〈鳥の祭り〉の夜、航海中に出会った少女ジサヴェトの幽霊と出会うのだが、そのことを知った「石の教団」の司祭から聖人を詐称したとして、膨大な書物を収めた「王立図書館」がそびえる島に幽閉されてしまう――。

 書物を愛する青年の成長物語を描いたファンタジーだが、念入りに作り込まれた架空の物語や言葉、地名、人名の豊穣さに圧倒される。(東京創元社 2900円+税)


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