入園・入学のお祝いにぴったりの美しい自然図鑑

公開日: 更新日:

「観察が楽しくなる美しいイラスト自然図鑑 野菜と果実編」ヴィルジニー・アラジディ著 エマニュエル・チュクリエル画 泉恭子訳

 世界の動植物を精緻なイラストで紹介する自然図鑑シリーズの一冊。「野菜と果実編」の本書では、「食べられる」植物を取り上げる。

 開くと、1ページ目にはメロンとニンジン、その次のページにはアンズとタマネギ、さらにその次はいろいろなカボチャと、一見すると何の脈絡もなく、野菜と果実が混在している。

 実は、普段は何げなく口にしている野菜と果実を、見た目で楽しめるように、色合いで分けて並べているのだ。コーヒーの実やピーマン、ビートの「赤」から、ナスやプルーンの「紫」、ホウレンソウやインゲンマメなどの「緑」へと、カラフルな100種以上の野菜と果物が登場する。

 解説は極めてシンプルだが、現在は野菜として食べられているトマトが、かつては「ポム・ダムール(愛のリンゴ)」あるいは「ポム・ドール(金のリンゴ)」と呼ばれ、美しい装飾的な植物として観賞に用いられていたとか、私たちがふだんイチゴの実と呼んでいるのは果実ではなく、本当の果実はその表面に見える「痩果」と呼ばれるたくさんの種の方などと、これまで知らなかった豆知識も得られる(ちなみにトマトが観賞用だったのは、毒があると思われていたからだそうだ)。

 フランス人イラストレーターが伝統的な博物画の手法で描くイラストは、精巧でありながら、温かみと、野菜や果物が備える「生き物」としての命が感じられる。

 それぞれのページには、サクランボをついばむ「クロツグミ」、ニンジンに引き寄せられた「ウサギ」、マンゴーに抱きつく「ヤモリ」など、動物や昆虫も添えられ、単なる植物図鑑に収まらず、命の謳歌に満ちている。

 他に「昆虫編」「樹木編」「動物編」も同時刊行。入園・入学のプレゼントにいかが。(創元社 1900円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    3年連続MVP大谷翔平は来季も打者に軸足…ドジャースが“投手大谷”を制限せざるを得ない複雑事情

  2. 2

    自民党・麻生副総裁が高市経済政策に「異論」で波紋…“財政省の守護神”が政権の時限爆弾になる恐れ

  3. 3

    立花孝志容疑者を"担ぎ出した"とやり玉に…中田敦彦、ホリエモン、太田光のスタンスと逃げ腰に批判殺到

  4. 4

    最後はホテル勤務…事故死の奥大介さん“辛酸”舐めた引退後

  5. 5

    片山さつき財務相“苦しい”言い訳再び…「把握」しながら「失念」などありえない

  1. 6

    ドジャースからWBC侍J入りは「打者・大谷翔平」のみか…山本由伸は「慎重に検討」、朗希は“余裕なし”

  2. 7

    名古屋主婦殺人事件「最大のナゾ」 26年間に5000人も聴取…なぜ愛知県警は容疑者の女を疑わなかったのか

  3. 8

    阪神異例人事「和田元監督がヘッド就任」の舞台裏…藤川監督はコーチ陣に不満を募らせていた

  4. 9

    高市内閣支持率8割に立憲民主党は打つ手なし…いま解散されたら木っ端みじん

  5. 10

    《もう一度警察に行くしかないのか》若林志穂さん怒り収まらず長渕剛に宣戦布告も識者は“時間の壁”を指摘