「平城京」安部龍太郎著
朝廷から処罰されて逼塞(ひっそく)していた阿倍船人を、兄の宿奈麻呂が訪ねてきた。藤原京に移ってまだ13年にしかならないのに奈良山の麓に新しい都を造る手助けをせよという。それもたった3年で。朝廷は唐に対して同盟的な従属国になることを申し入れたのだが、そのために唐に倣った都を造らなくてはならなくなったのだ。これは実力者、藤原不比等の命令だった。
だが、その予定地にはかつて雄略天皇に殺された眉輪王の御陵があり、王を慕う葛城氏が住んでいる。船人は彼らの権利を守るために奔走するが、朝廷の兵が眉輪陵の測量を始め、阻止しようとした葛城の民に襲いかかった。平城遷都を巡る壮大な歴史ロマン。
(KADOKAWA 1800円+税)