地味なオジサンの正体はCIA

公開日: 更新日:

 中年以上の読者なら先刻ご承知のように「ミッション:インポッシブル」はもともとテレビの「スパイ大作戦」だった。「スター・トレック」も「宇宙大作戦」である。「バットマン」は「バットマン」……となると笑い話だが、共通点はテレビのほうがよかったと断言できるところ。「バットマン」など、あの能天気で軽薄なテレビ版こそがサイケデリック全盛の60年代にふさわしかったのだ。

 ところが例外がある。80年代のテレビ「ザ・シークレット・ハンター」を映画化した「イコライザー」だ。話は「法が裁かぬ悪を裁く」式の仕置き人ものだが、テレビにしては暗い筋立てのオリジナル版を、汚れ役の似合わない優等生タイプのデンゼル・ワシントン向けにうまく作り替えて成功させた。その続編が今週末封切りの「イコライザー2」である。

 今回も読書好きの地味なオジサンが、実は悪にいたぶられる弱者を放っておけない引退したCIAという設定で、それがいつの間にか大スケールのアクションものに化けてしまうのも前作と同じ。

 ちなみにパート2ものは失敗か成功のどっちかで、二匹目のドジョウはつかまえるのが難しい。パート1と2がともにアカデミー賞を受賞した「ゴッドファーザー」などは奇跡みたいな例外で、あとは「スター・ウォーズ」のエピソード5(第1シリーズの2作目)など、本当に成功した続編はまれなのだ。

 では「イコライザー2」は……という答えは劇場で確かめてもらうとして、今回の一書には“児童文学パート2”の代表格A・リンドグレーン著「カッレくんの冒険」(岩波書店 720円)を挙げよう。「長くつ下のピッピ」の作者が“子どもから少年になりかけ”の13歳を描いた「名探偵カッレくん」の続編。移民排斥など考えられなかった時代のスウェーデンの名作である。

 <生井英考>

【連載】シネマの本棚

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    ドジャース佐々木朗希に向けられる“疑いの目”…逃げ癖ついたロッテ時代はチーム内で信頼されず

  2. 2

    ドジャース佐々木朗希の離脱は「オオカミ少年」の自業自得…ロッテ時代から繰り返した悪癖のツケ

  3. 3

    備蓄米報道でも連日登場…スーパー「アキダイ」はなぜテレビ局から重宝される?

  4. 4

    上白石萌音・萌歌姉妹が鹿児島から上京して高校受験した実践学園の偏差値 大学はそれぞれ別へ

  5. 5

    “名門小学校”から渋幕に進んだ秀才・田中圭が東大受験をしなかったワケ 教育熱心な母の影響

  1. 6

    大阪万博“唯一の目玉”水上ショーもはや再開不能…レジオネラ菌が指針値の20倍から約50倍に!

  2. 7

    今秋ドラフト候補が女子中学生への性犯罪容疑で逮捕…プロ、アマ球界への小さくない波紋

  3. 8

    星野源「ガッキーとの夜の幸せタイム」告白で注目される“デマ騒動”&体調不良説との「因果関係」

  4. 9

    女子学院から東大文Ⅲに進んだ膳場貴子が“進振り”で医学部を目指したナゾ

  5. 10

    “貧弱”佐々木朗希は今季絶望まである…右肩痛は原因不明でお手上げ、引退に追い込まれるケースも