一服の清涼剤のようなハイブリッドアニメ

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 今年4月に亡くなった高畑勲監督の遺作「かぐや姫の物語」。ジブリアニメでは破格の画風が話題になったが、これをしのぐ異色のアニメが来週末封切りの「大人のためのグリム童話 手をなくした少女」である。

 グリム童話の原形が「本当はおそろしい」話を含んでいることは近年知られてきたが、この話も貧しさゆえ父から悪魔に売られた娘が腕を切り落とされながら、からくも逃げ出して幸せをつかむ。だが、そこにも悪魔が追いすがってきて……という、幼児が聞いたら眠れなくなるような恐怖譚。それを北フランス出身のセバスチャン・ローデンバック監督が単身でアニメ化した。

「かぐや姫」は8年間50億円という遠大な企画だが、こちらは何と監督ひとりで1年間かけて絵を描いたのだという。普通ならそんな手数と時間で80分の長編アニメ制作は不可能。しかし監督は和筆の一筆描きのように見える「クリプトキノグラフィー」(直訳すれば「暗号映画術」)という独自の技法を編み出した。そこに生まれたのが、洋の東西も時代の古今も超えつつなお構図やカット割りは現代的という不思議なハイブリッド映画だ。なるほど成熟した「大人のための」一服の清涼剤のようなアニメである。

 この画趣が連想させるのが日本の俳画や文人画。たとえば草野心平著「酒味酒菜」(中央公論新社)は居酒屋も営んだ詩人による絵入りの食味随筆だが、8月15日を前にした今回は俳優・米倉斉加年「おとなになれなかった弟たちに…」(偕成社 1000円)を挙げたい。

 新劇俳優で大河ドラマの常連でもあった米倉氏は絵師としても異彩を放ち、実は筆者は生前のご本人から手製の豆本を頂戴したこともある。本書は戦時下で幼い弟を死なせた自身の体験をつづった物語。多数の挿絵もむろん自作。中学教科書に収録の「国民文学」でもある。

<生井英考>


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