「珈琲が呼ぶ」片岡義男著

公開日: 更新日:

 珈琲だけをテーマにした初の珈琲エッセー本。珈琲と椅子との関係、珈琲の登場する映画や音楽など、さながら珈琲百科全書の趣。読めば珈琲が飲みたくなること必至だ。(光文社 1800円+税)

■馥郁たる香りが立つエッセー

「富士には月見草がよく似合う」をもじれば、本書の著者には○○がよく似合う。その○○についての書き下ろしエッセー集。ついでにいえば、「僕」という一人称もとてもよく似合う。村上春樹が登場するより前から「僕」という主語をごく自然に使って違和感のない数少ない作家といえばヒントになるだろうか。

 さて○○である。さすがに漠然としすぎているから飲み物とだけいっておこう。著者と○○との長い付き合いの年月から、○○についてのさまざまな記憶から引き出されていく。話題は多岐にわたる。たとえば、○○を前に明かされる秘蔵のビートルズの4人のサイン入りポートレートをめぐる話、まだ駆け出しのライター時代に○○を横にいくつもの原稿を書いたこと。あるいは○○と椅子との密接な関係、「○○でいいや」というときの「で」に関する言語的考察、○○が出てくる映画と音楽に関する詳細な分析など、さながら○○百科全書の趣だ。

 頁のそこここから馥郁たる香りが立ち上り、読んでいるうちに○○が飲みたくなること必至。

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    巨人がソフトB自由契約・有原航平に「3年20億円規模」の破格条件を準備 満を持しての交渉乗り出しへ

  2. 2

    巨人が李承燁コーチ就任を発表も…OBが「チグハグ」とクビを傾げるFA松本剛獲得の矛盾

  3. 3

    NHK朝ドラ「ばけばけ」が途中から人気上昇のナゾ 暗く重く地味なストーリーなのに…

  4. 4

    日吉マムシダニに轟いた錦織圭への歓声とタメ息…日本テニス協会はこれを新たな出発点にしてほしい

  5. 5

    巨人正捕手は岸田を筆頭に、甲斐と山瀬が争う構図…ほぼ“出番消失”小林誠司&大城卓三の末路

  1. 6

    「おこめ券」でJAはボロ儲け? 国民から「いらない!」とブーイングでも鈴木農相が執着するワケ

  2. 7

    SBI新生銀が「貯金量107兆円」のJAグループマネーにリーチ…農林中金と資本提携し再上場へ

  3. 8

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  4. 9

    ドジャース首脳陣がシビアに評価する「大谷翔平の限界」…WBCから投打フル回転だと“ガス欠”確実

  5. 10

    「ばけばけ」苦戦は佐藤浩市の息子で3世俳優・寛一郎のパンチ力不足が一因