「珈琲が呼ぶ」片岡義男著

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 珈琲だけをテーマにした初の珈琲エッセー本。珈琲と椅子との関係、珈琲の登場する映画や音楽など、さながら珈琲百科全書の趣。読めば珈琲が飲みたくなること必至だ。(光文社 1800円+税)

■馥郁たる香りが立つエッセー

「富士には月見草がよく似合う」をもじれば、本書の著者には○○がよく似合う。その○○についての書き下ろしエッセー集。ついでにいえば、「僕」という一人称もとてもよく似合う。村上春樹が登場するより前から「僕」という主語をごく自然に使って違和感のない数少ない作家といえばヒントになるだろうか。

 さて○○である。さすがに漠然としすぎているから飲み物とだけいっておこう。著者と○○との長い付き合いの年月から、○○についてのさまざまな記憶から引き出されていく。話題は多岐にわたる。たとえば、○○を前に明かされる秘蔵のビートルズの4人のサイン入りポートレートをめぐる話、まだ駆け出しのライター時代に○○を横にいくつもの原稿を書いたこと。あるいは○○と椅子との密接な関係、「○○でいいや」というときの「で」に関する言語的考察、○○が出てくる映画と音楽に関する詳細な分析など、さながら○○百科全書の趣だ。

 頁のそこここから馥郁たる香りが立ち上り、読んでいるうちに○○が飲みたくなること必至。

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