「アジア系」が主役 迫真の心理サスペンス

公開日: 更新日:

 この夏、アメリカでは「クレイジー・リッチ・エイジアンズ」という映画が予想外のヒットを記録した。シンガポールの名門一族の孫に求婚された中国系アメリカ人女性が彼の故郷を訪ね、移民で苦労した自分たちとは違う豪遊三昧のリッチぶりに仰天する、というコメディー。

 しかし、日本では話題にもならず、逆に「なぜこれが?」が興味の的になった。実はアジア系は高学歴層を中心にアメリカで大きく社会進出した。だが、エンタメ界では脇役に過ぎず、その積年の反動がたわいもない凡作の大ヒットという“ゆがみ現象”になったのだという。

 一見納得のようだがアジア系が主役なら、より上出来のアメリカ映画がある。現在公開中の「search/サーチ」だ。

 シリコンバレーで働くITエンジニアの韓国系アメリカ人。愛妻を亡くし、高校生の娘と2人暮らしの子煩悩なパパだが、いつもSNSでやりとりする娘と突然連絡がつかなくなる。焦る父親、「高校生なんだから一晩ぐらい」となだめる周囲。逆上したパパは娘のパスワードを探り、ネット上で娘のゆくえをサーチする。ところがそこで目撃したのは……という型通りの心理サスペンス。それが面白いのは102分の物語全編がPCやスマホのモニター画面だけで進行すること。

 しかもその多くが、パパ役の韓国系男優ジョン・チョーがモニターをのぞく顔のクローズアップなのである。一歩間違うと凡作になりかねない設定に現実味を与える“秘密のレシピ”が「アジア系の主役」という味つけなのだ。

 スーチェン・チャン著「アジア系アメリカ人の光と陰」(大学教育出版 3000円)はアジア系の苦闘の歴史書だが、80年代以降は優秀すぎるアジア系学生の増加にハーバードなど名門大学が入学規制をかけて問題化しているという。“東京医大症候群”は日本だけの話じゃないのだ。

<生井英考>


最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  2. 2

    長嶋一茂は“バカ息子落書き騒動”を自虐ネタに解禁も…江角マキコはいま何を? 第一線復帰は?

  3. 3

    トリプル安で評価一変「サナエノリスク」に…為替への口先介入も一時しのぎ、“日本売り”は止まらない

  4. 4

    "お騒がせ元女優"江角マキコさんが長女とTikTokに登場 20歳のタイミングは芸能界デビューの布石か

  5. 5

    【独自】江角マキコが名門校との"ドロ沼訴訟"に勝訴していた!「『江角は悪』の印象操作を感じた」と本人激白

  1. 6

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  2. 7

    実は失言じゃなかった? 「おじいさんにトドメ」発言のtimelesz篠塚大輝に集まった意外な賛辞

  3. 8

    99年シーズン途中で極度の不振…典型的ゴマすりコーチとの闘争

  4. 9

    27年度前期朝ドラ「巡るスワン」ヒロインに森田望智 役作りで腋毛を生やし…体当たりの演技の評判と恋の噂

  5. 10

    今田美桜が"あんぱん疲れ"で目黒蓮の二の舞いになる懸念…超過酷な朝ドラヒロインのスケジュール