著者のコラム一覧
吉田友和旅行作家

1976年、千葉県生まれ。出版社勤務を経て2005年、旅行作家として活動開始。ドラマ化された「ハノイ発夜行バス、南下してホーチミン」のほか、著書に「3日もあれば海外旅行」「10日もあれば世界一周」「思い立ったが絶景」「東京発 半日旅」「泣かない一人旅」など多数。

「キャッシュレス国家」西村友作著

公開日: 更新日:

 中国の四川省に有名な「楽山大仏」を見にいった時のこと。入り口でチケットを買おうとして途方に暮れた。

 支払い方法が「アリペイ」「ウィーチャットペイ」のどちらかだけで、何と現金もクレジットカードも使えないというのだ。

 なぜそんなことになっているのか――本書を読めばその謎が解き明かされる。モバイル決済が広く普及したことで、中国は今や「キャッシュレス国家」へと変貌を遂げた。中国人は財布を持ち歩かなくなったといわれるが、世界遺産クラスの観光地でさえ現金お断りという現状をこの目にすると、それも腑に落ちるのだ。

 日本でも少しずつ導入が進むQRコードを利用したモバイル決済だが、中国では「決済できないシーンが皆無といえるほど」に人々の生活に溶け込んでいる。「中国新経済」における重要なプラットフォームであり、これを起点に、それまで想像もしなかったような新サービスが発明されている。

 たとえばレストランでは、テーブルに掲示されたQRコードを読み込むと画面に写真付きのメニューが出てくる。食べたいものを選べば、店員が料理を運んできてくれるわけだ。支払いもスマホだけで完結する。複数人で割り勘にする場合、頭割りの金額を自動的に計算の上、各自のアプリに請求が届くのだという。

 ほかにも無人コンビニや無人カラオケなど話題は尽きない。中国の町の風景を一変させた「シェア自転車」も象徴的な存在だ。これは中国旅行で実際に利用してみたが、スマホだけで解錠できて、どこでも乗り降り自由というのは本当に便利だと感じた。上海の地下鉄駅では「シェア傘」も見かけた。あれなら急に雨が降ってきた時、ビニール傘を買わなくて済む。

 他国に代わって「壮大な社会実験」を行っている中国。日本にもこんなサービスがあったらいいのになあ、と羨みながら読んだ。(文藝春秋 850円+税)

【連載】紙上であちこち探訪本

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