「蒼色の大地」薬丸岳著

公開日: 更新日:

 舞台は、明治時代の瀬戸内地域。両親を亡くし、15歳から2人で生きてきた榎木新太郎とその妹の鈴は、新太郎が軍人からの支援を受けて海軍兵学校に入り、妹を無理やり高等女学校に入れたことから仲たがいしてしまった。新太郎が軍人になることに反対していた鈴は、新太郎が帰省したにもかかわらず、旅に出てしまう。鈴が向かったのは、瀬戸内海に浮かぶ謎多き島・鬼仙島。子どもの頃、鈴が誤って沼に落ちてしまったときに助けてくれた幼馴染みの灯を捜しにきたのだ。灯は蒼い目であることを理由に村人から差別を受けていたのだが、鬼仙島には蒼い目の人間が多く住んでおり、村を出ていった灯はこの島にいるのではないかと鈴は思っていた。しかし灯は、瀬戸内海を跋扈する海賊になっていた……。

 子ども時代を共に過ごした新太郎、鈴、灯の3人が時を経て、思いもよらない形で邂逅を果たす物語。本作は、伊坂幸太郎の呼びかけで始まった8組9人の作家による競作企画「螺旋プロジェクト」の作品のひとつ。海と山という2つの世界の対立が生み出してきた過酷な運命にあらがう若者の葛藤を描く。 (中央公論新社 1700円+税)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    安青錦は大関昇進も“課題”クリアできず…「手で受けるだけ」の立ち合いに厳しい指摘

  2. 2

    阿部巨人に大激震! 24歳の次世代正捕手候補がトレード直訴の波紋「若い時間がムダになっちゃう」と吐露

  3. 3

    マエケン楽天入り最有力…“本命”だった巨人はフラれて万々歳? OB投手も「獲得失敗がプラスになる」

  4. 4

    中日FA柳に続きマエケンにも逃げられ…苦境の巨人にまさかの菅野智之“出戻り復帰”が浮上

  5. 5

    今田美桜に襲い掛かった「3億円トラブル」報道で“CM女王”消滅…女優業へのダメージも避けられず

  1. 6

    高市政権の“軍拡シナリオ”に綻び…トランプ大統領との電話会談で露呈した「米国の本音」

  2. 7

    エジプト考古学者・吉村作治さんは5年間の車椅子生活を経て…80歳の現在も情熱を失わず

  3. 8

    日中対立激化招いた高市外交に漂う“食傷ムード”…海外の有力メディアから懸念や皮肉が続々と

  4. 9

    安青錦の大関昇進めぐり「賛成」「反対」真っ二つ…苦手の横綱・大の里に善戦したと思いきや

  5. 10

    石破前首相も参戦で「おこめ券」批判拡大…届くのは春以降、米価下落ならありがたみゼロ