「スター」朝井リョウ著

公開日: 更新日:

 主人公は、ぴあフィルムフェスティバルでグランプリを受賞した立原尚吾(たちはら・しょうご)と大土井紘(おおどい・こう)。2人とも大学3年生で、2人で1つの作品を監督するという話題性もある映画での受賞だったこともあり、世間から大いに注目を浴びた。

 大学卒業後、尚吾は憧れの名監督・鐘ケ江誠人が所属する映像制作会社に入社し、紘は就職せず友人から頼まれたユーチューブの映像制作を始める。尚吾は、監督補助の仕事をしつつ細部にこだわった脚本を練っていたが、修業期間が今後短縮されそうなことに加えて、紘が撮影している動画が50万回以上視聴されている人気動画になったことを知り、衝撃を受ける……。

桐島、部活やめるってよ」で第22回小説すばる新人賞を受賞してデビューし、「何者」で第148回直木賞、「世界地図の下書き」で第29回坪田譲治文学賞を受賞するなど、快進撃を見せる著者の最新作。高品質な作品を作る環境にありながら収益が尻すぼみになっていく業界に身を置く尚吾と、スピードが要求され質の担保が難しい世界に身を投じた紘の姿から、今の時代に生きる表現者が直面するリアルな問題が見えてくる。

(朝日新聞出版 1600円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  4. 4

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  5. 5

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  1. 6

    巨人が助っ人左腕ケイ争奪戦に殴り込み…メジャー含む“四つ巴”のマネーゲーム勃発へ

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    支持率8割超でも選挙に勝てない「高市バブル」の落とし穴…保守王国の首長選で大差ボロ負けの異常事態

  4. 9

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  5. 10

    和田アキ子が明かした「57年間給料制」の内訳と若手タレントたちが仰天した“特別待遇”列伝