七尾与史(作家)

公開日: 更新日:

1月×日 知り合いの東大卒で元プロ雀士である美人弁護士が作家デビューしたということで、彼女からデビュー作が送られてきた。ペンネームは新川帆立。「元彼の遺言状」(宝島社 1400円+税)である。

 なんでも売れに売れているという。本人の肩書きもすごいと思うが、作中のヒロインはさらにすごい。正義よりもお金を重んずる美人弁護士。小説家は真面目な人が多いのか、ふざけた弁護士が登場する小説は読んだことがない。そんな中で本作のヒロインはぶっとんでる。しかし彼女の言動にはちゃんと筋が通っていて、やっていることはメチャクチャだが実は誠実だったりする。

「僕の全財産は僕を殺した犯人に遺す」という前代未聞の遺言書。これによって「犯人選考会」が開催されて、ヒロインは依頼人が犯人に選ばれるよう奮闘するというとんでもないストーリーのミステリーだ。

 よくぞこんなこと思いついたものだと感心しながら読み進めると、これがまた誠実なミステリーになっていることに驚かされた。作者本人も肩書きを見ればぶっとんでいるが、誠実な人柄であるのでそういうことなのだろうと納得した。

 それにしても優れたミステリー小説というのは伏線回収劇が実に見事である。張り巡らされた伏線が回収されるって快感すぎる。

1月×日 担当編集者から重版のお知らせメールが届く。「重版出来」なんて素敵な言葉なのだろう。言うまでもなく古今東西、すべての四字熟語で一番好きな四文字だ。ちなみに「出来」を「しゅったい」と読むことを知ったのは作家デビューしてからである。

1月×日 映画「ミッション・マンガル 崖っぷちチームの火星打上げ計画」を鑑賞する。火星探査プロジェクト成功を描いたインド映画だ。

 今の日本には彼のようなリーダーが必要だ。しかし首相の歯切れの悪い記者会見を見ているとうんざりした気分になってしまう。

「俺の言うことを聞いて俺に任せろ! 責任は俺がすべて取る!」と言えば支持率はうなぎ上りになると思う、いや、ならないかな。

【連載】週間読書日記

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    侍ジャパンに日韓戦への出場辞退相次ぐワケ…「今後さらに増える」の見立てまで

  2. 2

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  3. 3

    “新コメ大臣”鈴木憲和農相が早くも大炎上! 37万トン減産決定で生産者と消費者の分断加速

  4. 4

    侍J井端監督が仕掛ける巨人・岡本和真への「恩の取り立て」…メジャー組でも“代表選出”の深謀遠慮

  5. 5

    阪神の日本シリーズ敗退は藤川監督の“自滅”だった…自軍にまで「情報隠し」で選手負担激増の本末転倒

  1. 6

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋

  2. 7

    藤川阪神で加速する恐怖政治…2コーチの退団、異動は“ケンカ別れ”だった

  3. 8

    矢地祐介との破局報道から1年超…川口春奈「お誘いもない」プライベートに「庶民と変わらない」と共感殺到

  4. 9

    渡邊渚“逆ギレ”から見え隠れするフジ退社1年後の正念場…現状では「一発屋」と同じ末路も

  5. 10

    巨人FA捕手・甲斐拓也の“存在価値”はますます減少…同僚岸田が侍J選出でジリ貧状態