「図鑑哲学」トム・ジャクソン著 高橋昌一郎監訳 屋代菜海訳

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 コロナだけでなく、分断や紛争、格差など、人類の先行きには不安がいっぱい。地球規模だけでなくとも、それぞれに悩みを抱え、不安が尽きないという人も多いことだろう。

 そんなときは哲学だ。難解そうで、すぐに人生に役立つとは思えない哲学だが、その歴史を見渡せば、今までとは異なる考え方ができたり、自分の存在について他にも多くの捉え方があることに気づくことができるという。

 本書は、偉大な思想家たちが人類史に刻んだ100の哲学的な見解を紹介する図鑑。その見解のひとつひとつが、人類にとっての発見であり、世界の成り立ちや人間のありように対する理解を変えてきた重要な問題を取り上げている。

 哲学の始まりは「世界は何でつくられているのだろう」というシンプルな疑問だった。紀元前6世紀、ギリシャの港町ミレトスに住むタレスは、それまでの「魔法によって」や「神話によると」という答えに納得せず、「あらゆるものは水からできている」と考えた。この世界はひとつのものからできているとする考え方は「一元論」と呼ばれ、タレスから西洋思想が始まったといわれる。

 以降、ソクラテスなどの古代ギリシャ哲学に始まり、また「哲学に近い」と言われてきた仏教、「神が存在するか、しないか」どちらに賭けるかを考えたパスカル、1790年代に有史以来の男性優位に抵抗を試みた史上初のフェミニストのメアリ・ウルストンクラフト、そしてこの世界はすべて未来のコンピューターシミュレーションでつくられた存在だという仮説を提唱する現代の哲学者ニック・ボストロムまで。人類の世界観を覆した人々とその哲学的成果を解説する。

 彼らの思想が、思い悩む私たちに意外な視点と新たな光をもたらしてくれるはずだ。

(ニュートンプレス 2300円+税)

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