「コロナマニア」岩田宇伯著

公開日: 更新日:

 新型コロナウイルスによって世界は一変。目に見えぬ恐怖が人々の心をむしばみ、「坊主憎けりゃ袈裟まで憎い」の言葉通り、コロナという言葉にさえ異常に反応する始末だ。

 日本では、大手暖房機器メーカーが従業員の子どものために新聞広告を出したことが話題になったが、ブランドイメージスコアが低下したメキシコのビールや、同じ名前でいじめに遭ったオーストラリアの少年など、それは世界的現象のようだ。

 しかし、コロナウイルスはその形状から「太陽コロナ」にちなんで命名されたもの。そして太陽コロナは、ラテン語で「冠」を意味する言葉で、もともとは「高貴で権力のある冠や輝かしくエネルギーに満ちた太陽を想起させる縁起のいい言葉」なのだ。商品や企業名にするのもうなずける。

 本書は、ウイルス出現以前から世界中に存在するそんな「コロナ」と名付けられたモノを収集、紹介するビジュアル本。

 まずは国内の店舗や企業編。さまざまなデータベースにアクセスしてコロナの名がつくものを一堂に並べてみる。すると意外にも理容系の店が多いことが分かる。また、個人商店の多くは、トヨタの車「コロナ」が好調な販売実績を上げていた1960年代から80年代にかけて創業したところが多いようだという。

 以降、海外店舗・企業、製品名・ブランド、地名、歌手などジャンル別に「コロナ」が大集合。

 その合間に、風評被害に遭った長野県の「味蔵コロナ食堂」や「大阪コロナホテル」の関係者への電話インタビューや、愛知県で展開する総合アミューズメント施設「コロナワールド」や地元密着型スーパー「フードショップコロナ」探訪記などのコラムも充実。

 コロナ禍で密かに苦しむ人にスポットを当てた着眼点と取材力に感嘆。

(合同会社パブリブ 2000円+税)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1
    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

    日本球界今オフを襲うポスティング地獄…“予備軍”もゴロゴロ、空洞化ますます加速

  2. 2
    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

    佐々木朗希とのただならぬ関係…陰で糸引く「黒幕」は大船渡高時代の韓国遠征まで追いかけた

  3. 3
    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

    ついに国民年金65歳まで納付案が…政府がヒタ隠す「年金積立金250兆円」という都合の悪い真実

  4. 4
    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

    キムタクを縛り続ける《公称176cm》のデータ…「Believe」番宣行脚でも視聴者の関心は共演者との身長比較

  5. 5
    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

    裏金自民に大逆風! 衆院3補選の「天王山」島根1区で岸田首相の“サクラ”動員演説は大失敗

  1. 6
    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

    「白鵬の弟子」押し付け合い勃発! あちこちから聞こえる師匠譲りの不穏な評判

  2. 7
    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

    キムタクと9年近く交際も破局…通称“かおりん”を直撃すると

  3. 8
    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

    キムタク主演ドラマがまさかの1ケタ…“考察”慣れしすぎて王道スポ根が楽しめない?

  4. 9
    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

    全国紙が全国紙でなくなる?「新聞販売店」倒産急増の背景…発行部数の激減、人手不足も一因に

  5. 10
    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異

    大谷は徹底した個人主義、思考回路も米国人…ゴジラ松井とはメンタリティーに決定的差異