「看取り医 独庵」根津潤太郎著
仙台藩の奥医者だった玄宗は、独庵と名乗り、浅草諏訪町で開業。浪人のような風貌の独庵だが、腕は確かだ。
ある夜、材木問屋扇橋屋の志乃が夫の徳右衛門の様子がおかしいと診療所を訪ねてくる。聞くと一日中、庭で薪割りをしているというのだ。独庵は、夫のボケを心配する志乃に頼まれ、往診に出掛ける。徳右衛門によると、半月後に迫った果たし合いのため体を鍛え直しているという。
相手の宋鉄は40年も前に郷里の佐賀で同じ道場に通っていた仲で、実は志乃を争った恋敵だった。重い病で余命を悟った宋鉄が果たし合いを申し入れてきたというのだ。独庵は、理由をつけて今は呉服屋を営む宋鉄の家に往診に出掛ける。(「墨堤の風」)
ときに自らの刀で看取(みと)りも辞さぬ独庵を主人公に描く時代エンタメ。
(小学館 726円)