スペシャリストが解説 名作絵画本特集

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「リボルバー」原田マハ著

 誰もが知っている名画であっても、その絵に隠されている意味はなかなか知ることができないが、学芸員さながらのスペシャリストたちの手にかかれば、美術オンチでもそのさまざまな楽しみ方を知ることができる。そこで今回は、ステイホーム中でも楽しめる5冊の美術本をご紹介!

◇

 主人公は、パリのオークション会社「キャビネ・ド・キュリオジテ」に勤務する日本人女性・高遠冴。ある日、オークションが終わった会場で、冴はひとりの女性がたたずんでいるのを見つけ声をかける。

 サラと名乗るその女性は、見てほしいものがあると言い、さびついた一丁のリボルバーを取り出した。彼女によれば、この拳銃はフィンセント・ファン・ゴッホを撃ち抜いたものだというのだ。果たして、サラの証言は真実なのか。冴は会社の命運を懸けて調査を始めるのだが……。

 本書は、ゴッホが自殺に使ったとされるリボルバーが2019年にパリで競売にかけられ、16万ユーロで落札された史実を基に書かれたアートフィクション。ゴッホとゴーギャンというふたりの画家の関係からゴッホの死の謎を読み解く。

(幻冬舎 1760円)

「美術は宗教を超えるか」宮下規久朗、佐藤優著

 西洋美術とキリスト教は切っても切れない関係にあり、キリスト教を知らずして西洋美術を語ることは難しい。本書では、キリスト教信者であり美術史家である宮下氏と、「国家の罠」などの著書で有名な佐藤氏が対談を通して美術と宗教の深い関係を明らかにしている。

 偶像崇拝を禁止するキリスト教の中で、宗教画は偶像ではなく聖なるものとつながるイコン=窓として機能した。目に見えない神がイエスという人間の形をとって顕在化(受肉)したように、キリストの顔を写した絵がキリストの痕跡として増殖したのだ。

 宮下氏は、現代アートであっても宗教とは無縁ではなく、美術鑑賞は作品を通して行う宗教行為だという。佐藤氏も、絵画は人間の意図を超えて外部に表れる宗教を超えたものではないかと話している。

(PHP研究所 2475円)

「北斎のデザイン」戸田吉彦著

 国境や世代を超えて高い評価を受けている葛飾北斎の作品が、なぜ世界中の人々を魅了する力を持つのか、デザインという視点から解説。構図、色彩、意匠、カメラアイ、季節と人間、幾何学的形態、線の魅力という、7つの切り口から作品を分析していく。

 例えば、北斎の最も有名な代表作である「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」は、目前に迫る大波、浮かぶ舟、遠景の富士山を描いた絵だが、画面を縦横それぞれ3分割した上で、さらにそこに分割線を引くと、大波の角度や、富士山の裾野が見事にその交点に一致する構図となっている。さらに、大波を強調するために、鑑賞者の視点が富士の裾野の標高0地点より低く設定されていることも指摘。北斎の絵の読み解き方がよくわかる。

(翔泳社 2200円)

「こじらせ美術館」ナカムラクニオ著

 人生がうまくいかず、「こじらせた部分」を持っていた先人が、美術界の巨匠として愛されている。そう考える著者が、恋愛、人間関係、自意識などをこじらせた芸術家たちを紹介。

 ピカソは貴族出身の最初の妻・オルガと仲むつまじい時は「青の時代」の作風を「新古典主義」へと変化させながら上流階級の顧客をゲット。その後、17歳のマリーとも付き合いカラフルな画風に変えていく。マリー妊娠中には写真家ドラと付き合い、彼女がよく泣いたため「泣く女」が誕生し、その後、フランソワーズという画学生にアプローチする。ピカソのあまりの破天荒ぶりに暴露本を出されるものの、72歳になると今度は27歳のジャクリーヌに求婚。彼女をモデルに数々の絵を描く。

 巨匠たちの圧巻のこじらせぶりをお楽しみあれ。

(ホーム社 1980円)

「名画のミステリー」美術雑学愛好倶楽部編

 よく知る名画でも、画家が本当は何を描こうとしていたのか、よくわからない絵も多い。そんな時、参考になるのが本書だ。

 たとえばフェルメールの名画に、右手に天秤を持った女性を描いた「天秤を持つ女」がある。この絵は当初「金貨を量る女」という名前で呼ばれていたが、机の上に真珠があったために途中から「真珠を量る女」と改名され、その後の研究で天秤の皿に何もないことが判明して今の名に改められた。

 しかし、ここで空の天秤でこの女性が何を量っているかが疑問になってくる。その答えは、この女性の背景に飾られている最後の審判の絵にあった。善悪を振り分ける大天使ミカエルの位置に女性がいることから、この女性はミカエルの化身として魂の善悪を量っているらしい。絵の隅々に隠されたメッセージが面白い。

(天夢人 1870円)

【連載】ザッツエンターテインメント

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