「出セイカツ記」ワクサカソウヘイ著

公開日: 更新日:

 著者はいつも「不安」に脅かされていた。将来、飢えたり、住む所を失ったりしたら……。

 そんなとき、近所に住む悦子さんが声をかけてくれた「草、食べない?」。悦子さんは野草を摘んで天ぷらにするのが趣味なのだ。「なるほど、草ですか……」

 著者は家も失い、食いつめて河原で草を摘んで食べる自分をいつも想像していた。だが、野草天ぷらを食べて驚いた。おいしい。悦子さんが「お金がなくなっても野草を食べればいいんだもん」と言うのを聞いて自分を縛っていた呪縛が解けた。著者の不安は「まっとうな衣食住」という呪いから生まれているのだ。

「社会の当たり前」をユニークな視点から見直すエッセー。

(河出書房新社 1705円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    不慮の事故で四肢が完全麻痺…BARBEE BOYSのKONTAが日刊ゲンダイに語っていた歌、家族、うつ病との闘病

  2. 2

    「対外試合禁止期間」に見直しの声があっても、私は気に入っているんです

  3. 3

    箱根駅伝3連覇へ私が「手応え十分」と言える理由…青学大駅伝部の走りに期待して下さい!

  4. 4

    「べらぼう」大河歴代ワースト2位ほぼ確定も…蔦重演じ切った横浜流星には“その後”というジンクスあり

  5. 5

    100均のブロッコリーキーチャームが完売 「ラウール売れ」の愛らしさと審美眼

  1. 6

    「台湾有事」発言から1カ月、中国軍機が空自機にレーダー照射…高市首相の“場当たり”に外交・防衛官僚が苦悶

  2. 7

    高市首相の台湾有事発言は意図的だった? 元経産官僚が1年以上前に指摘「恐ろしい予言」がSNSで話題

  3. 8

    AKB48が紅白で復活!“神7”不動人気の裏で気になる「まゆゆ」の行方…体調は回復したのか?

  4. 9

    大谷翔平も目を丸くした超豪華キャンプ施設の全貌…村上、岡本、今井にブルージェイズ入りのススメ

  5. 10

    高市政権の「極右化」止まらず…維新が参政党に急接近、さらなる右旋回の“ブースト役”に