著者のコラム一覧
柚月裕子

1968年、岩手県生まれ。2008年「臨床真理」で第7回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。2013年「検事の本懐」で第15回大藪春彦賞、2016年に「孤狼の血」で第69回日本推理作家協会賞受賞。著書に「慈雨」「盤上の向日葵」など多数。

第二話 立場的にありえない(6)手首を切ったのは1年生の夏

公開日: 更新日:
イラスト・大野博美

 丹波が、由奈が警視庁の組織犯罪対策部部長、五十嵐の娘だと知ったのは、一週間後だった。その日、丹波は用事があり、入院している老人を再び見舞った。

「病棟のフロアに行ったら、またその子が同じ場所にいてよ。やっぱりものすごく寂しそうだったんだ。気になってぼんやり見ていたら、エレ… 

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