「北関東『移民』アンダーグラウンド」安田峰俊著

公開日: 更新日:

「北関東『移民』アンダーグラウンド」安田峰俊著

 ベトナムから技能実習生として来日したものの職場からドロップアウトし、アンダーグラウンドな存在となった「ボドイ」と呼ばれる者たち。

 もともと中国問題を追いかけていた大宅賞作家である著者は、在日中国人の技能実習生問題や外国人犯罪問題を追及するなかで、中国人が消えベトナム人に入れ替わったことに気づいた。

 日本育ちのベトナム人2世の通訳「チーくん」を相棒に、大量の米やビールを手土産にしてボドイの住まいに突入した著者は、北関東に張り巡らされた彼らのネットワークに行きあたる。英語も日本語もつたないボドイは、ベトナム語が通じて闇で仕事を紹介してくれるキーパーソンを頼り、北関東各地の拠点に一緒に住んでいた。

 彼らは日本で生き延びようとするなかで、無免許・無保険運転でのひき逃げ死亡事故、ウーバーイーツで働くなかでの高速道路に自転車侵入、豚や鶏などの窃盗疑惑、ベトナム人同士の殺人等々、数々の事件を巻き起こす。

 どんな背景が彼らをそうさせるのか。彼らの生の声から、日本の労働人口減少を、ボドイを利用して補おうとする社会の矛盾が浮かび上がってくる。

(文藝春秋 1760円)

【連載】週末に読みたいこの1冊

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    阪神・大山悠輔「5年20億円」超破格厚遇が招く不幸…これで活躍できなきゃ孤立無援の崖っぷち

  2. 2

    織田裕二がフジテレビと決別の衝撃…「踊る大捜査線」続編に出演せず、柳葉敏郎が単独主演

  3. 3

    兵庫県・斎藤元彦知事を待つ12.25百条委…「パー券押し売り」疑惑と「情報漏洩」問題でいよいよ窮地に

  4. 4

    W杯最終予選で「一強」状態 森保ジャパン1月アジア杯ベスト8敗退からナニが変わったのか?

  5. 5

    悠仁さまは東大農学部第1次選考合格者の中にいるのか? 筑波大を受験した様子は確認されず…

  1. 6

    指が変形する「へバーデン結節」は最新治療で進行を食い止める

  2. 7

    ジョン・レノン(5)ジョンを意識した出で立ちで沢田研二を取材すると「どっちが芸能人?」と会員限定記事

  3. 8

    中山美穂さんの死を悼む声続々…ワインをこよなく愛し培われた“酒人脈” 隣席パーティーに“飛び入り参加”も

  4. 9

    巨人今季3度目の同一カード3連敗…次第に強まる二岡ヘッドへの風当たり

  5. 10

    「踊る大捜査線」12年ぶり新作映画に「Dr.コトー診療所」の悲劇再来の予感…《ジャニタレやめて》の声も