著者のコラム一覧
山上たつひこ

1947年、徳島県生まれ。70年「光る風」で注目され、72年「喜劇新思想大系」でリアルな画風のギャグを確立。74年連載開始の「がきデカ」が社会的ブームに。88年から小説執筆を開始。2014年、原作を担当した「羊の木」(いがらしみきお画)が文化庁メディア芸術祭優秀賞を受賞。著書に「蝉花」「火床より出でて」「大阪弁の犬」「王子失踪す」ほか。

(93)綾瀬の周囲から風景が消えた

公開日: 更新日:
イラスト とり・みき

 綾瀬の足が止まった。彼は今来た道を戻った。わずかな距離を早足で歩いただけなのに綾瀬の息は乱れていた。建物の陰に動くものはなかった。落ち葉もない。空気の渦の気配もない。綾瀬は路地の一点を見つめて動かなかった。

 そこは綾瀬の住む町から二つ県境を越えた都市である。葦伏には売っ… 

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【連載】金鳳花のフール

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