「江戸・明治のロゴ図鑑」友利昴著

公開日: 更新日:

「江戸・明治のロゴ図鑑」友利昴著

 見渡せば世の中には企業のロゴマークがあふれている。ロゴマークの役割は、企業が自社や商品に込めた理念、社会的意義をデザインの力で象徴的に示すこと。そして、マークを付した企業や商品が本物・公式であることを示すことだ。

 事業者にとって大切なロゴマークを守るための手続きが商標登録だ。日本の同制度は今から140年前の明治17(1884)年に誕生。出願はその時点で使用実績のあるロゴマークも可能だったので、初期の登録商標には、明治初期から江戸時代、それ以前から使われていたものが多く集まっている。

 そんな江戸・明治時代に用いられていたロゴマークを紹介する図鑑。

 記念すべき日本の登録商標第1号は京都の売薬商人が出願した膏薬「養命膏」のマーク。

 魚をさばいていた丁稚が、誤って指を切り落としてしまい困り顔をしているという図案で、膏薬を塗れば、こんな大けがでも安心という趣向らしい。

 最初期の登録商標は売薬や醤油、清酒など伝統産業のものが多く、家紋調や暖簾印、浮世絵風など意匠もさまざまで、江戸情緒を感じさせる図案も多い。そんな中、この「養命膏」のマークは、当時としても異彩を放っているという。

 清酒「剣菱」のお馴染みのロゴマーク。日本最古の清酒のブランドともいわれる剣菱の創業は室町時代の永正2(1505)年で、ロゴマークも当時から使われていたそうだ。あのマークは男女の交わり=陰陽和合をモチーフにしており、家運隆盛を象徴しているのだとか。

 ほかにもお馴染みの企業や商品のロゴマークの原型などが多数あり、それぞれの企業の起源やマークの来歴と変遷などをエピソードとともに解説。

 ビジネスのヒントが見つかりそうなおすすめ図鑑。 (作品社 2640円)

最新のBOOKS記事

日刊ゲンダイDIGITALを読もう!

  • アクセスランキング

  • 週間

  1. 1

    大谷翔平は米国人から嫌われている?メディアに続き選手間投票でもMVP落選の謎解き

  2. 2

    大谷翔平の来春WBC「二刀流封印」に現実味…ドジャース首脳陣が危機感募らすワールドシリーズの深刻疲労

  3. 3

    前田健太は巨人入りが最有力か…古巣広島は早期撤退、「夫人の意向」と「本拠地の相性」がカギ

  4. 4

    新生阿部巨人は早くも道険し…「疑問残る」コーチ人事にOBが痛烈批判

  5. 5

    来春WBCは日本人メジャー選手壊滅危機…ダル出場絶望、大谷&山本は参加不透明で“スカスカ侍J”に現実味

  1. 6

    詞と曲の革命児が出会った岩崎宏美という奇跡の突然変異種

  2. 7

    高市政権にも「政治とカネ」大噴出…林総務相と城内経済財政相が“文春砲”被弾でもう立ち往生

  3. 8

    「もう野球やめたる!」…俺は高卒1年目の森野将彦に“泣かされた”

  4. 9

    連立与党の維新が迫られる“踏み絵”…企業・団体献金「規制強化」公明・国民案に立憲も協力

  5. 10

    新米売れず、ささやかれる年末の米価暴落…コメ卸最大手トップが異例言及の波紋